あの日から、何度か電話をしても舞は出ないし、折り返しかけてくることもない。
もう3日が経つ。
やはり、舞は僕が何者なのかだと気付いたんだと日に日に確信に変わっていく。
電源の入っていないパソコンの液晶に映った自分と目が合う。
あの日から、アイツも出て来ていない。
世界も色をなくしたまま。
自分が人ではなくなっていく感覚に襲われる。
「…いっ!おいって!」
「はいっ!!」
「何ボーッとしとるんや!?あれから、お前変やぞ?舞とやっぱりなんかあったんやろ?」
「いえ、なにもないですよ。大丈夫なので、心配しないでください。」
「心配しないでくださいって言われてもなぁ…舞は大事な姪や。それにお前にも幸せになってほしんや。」
頭をボリボリ掻きながら困り果てた様な表情を見せた。
「どうしてそこまで、僕の事考えてくれるんですか?」
「自分でもようわからん。ただ最初面接でお前に会った時なんか気になってな…それもなんでかは、わからんけどな!」
そう言って五十嵐はニカっと笑った。
「まぁなんもないって言うならそれでもええ…でも、自分でも堪えきれんようになったら、ちゃんと頼ってくれよ!」
「はい。」
肩に置かれた五十嵐の手は温かく透は全て吐き出したい衝動に駆られた。
けれど、言ってしまえば確実に此処は最悪の場所になる。
自分よりもひと回りも、ふた回りも大きい体の五十嵐に勝てるわけがない。
此処には凶器になる物もない。
せいぜいハサミぐらいしかない。
ハサミを手にしても掴まれてしまえば終わりだ。
それより僕はこの人を殺したくなんかない。
だから、なにがなんでも言えない。
なにより、本当に舞が気付いてしまったのか、確かめる必要がある。
透は携帯を手に取り、舞の番号をリダイヤルした。