間違いなかった。
あの鈴はあの時、あの雨の中で聞いた鈴と同じ音。
珍しい音だから鈴とは思えなかったけど、確信できた。
透の家を出た舞は廊下を曲がり透の視界から消えた所で座り込んだ。
口を押さえ漏れそうになる声を必死に堪えた。
次から次へと涙が溢れては零れていく。
ーあの激しい雨の日、私の頭を撫でて置いて行ったお父さんの足音。
雨の音に紛れそうな声を必死に聞いていた。
何か揉めている声。
お父さんより、ずっと若い声。
お父さんじゃない声が声を荒げた。
その瞬間ドサッと何かが倒れる音。
同時に鈴の音がした。
雨の音が消える。
苦しそうに話すお父さんの声。
若い声の持ち主はお父さんに怒鳴ると走って行ってしまった。
私は声を出してお父さんを呼んだ。
返事は帰って来ない。
怖さが辺りを包んだ。
一気に涙が溢れる。
何度も何度もお父さんを呼んだ。
もしかしたら、幼き私の声はお父さんに届いていなかったのかもしれない。
また…さっきの足音が近付いて来た。
足音が何かを探してる?
また鈴の音。
何かを拾ったのだろうか?
「パパ?」
恐る恐る声出した。
足音の持ち主は私に気付き少し近付いた。
けれど、その足音はまた離れて行った。
どのくらい経ったのか、足音は再び聞こえることはなく、私はお父さんの約束を破り、その場から動いた。
ゆっくり歩き出す。
お父さんの声がしていた場所へとすり足で近付く。
何歩か歩いた所で何かに躓き転んだ。
持っていた傘がふわりと手から離れた。
すぐに体は雨で濡れていく。
手探りで躓いた原因を探す。
指の先に温かい何かがあたり、絡んで来た。
水じゃない、生温い液体。
鼻に持っていき匂いを嗅いだ。
怪我をした時に嗅いだ匂いと同じ。
血だとわかる。
急いで手探りをする。
手がお父さんを見つけた。
「パパァァ!!!」
お父さんは何も反応してはくれなかった。
お父さんの胸に抱きついた。
呼吸で動くはずの体がピクリとも動かない。
大声で叫んだ。
誰でもいいから、助けて欲しくて何度も何度も叫んだ。
「キャーー!!」
女の人の叫び声。
「パパを助けてっ!!」
救急車とパトカーのサイレンが聞こえる。
あの雨の日。霧がかかったような視界で視力なんてあるようでない状態だった。
音だけが私の支えだった。
昨夜降りしきる雨の中で鍵を出した、あの時、奥にしまいこんでいた記憶が目を覚ました。
聞いた事がある鈴の音。
まさかそんな事あるわけないと思った。
叔父さんが寝た後何度も鈴の音を聞いた。
自分の記憶を間違いだと思いたかったから。
けれど、その行為は決定付けただけだった。
聞けば聞くほど、あの時の音と重なって行く。
最近手にしたんだと聞きたかったのに、小さい時からずっと付けてるなんて…。
あの雨の日から、雨の音を聞くと思い出していた鈴の音。
私の記憶が間違ってるなんて、ない。
じゃお父さんを殺したのは…深海さん?
そんな初めて愛した人は自分の家族を奪った人?
「そんな…。」
舞は泣き止むことが出来なかった。
透に言ったけれど学校には行けなかった。
フラフラと力なく家路に着いた。
母親は仕事で誰も居ない静まり返った家。
玄関を開けると、そのままリビングに入り仏壇の前に座った。
「お父さん…私どうしたらいい?」
位牌の父親は何も言ってはくれない。
「私…あの日から抜け出せないでいるみたいだよ。」
舞は泣いても泣いても止まることのない涙流した。
あの鈴はあの時、あの雨の中で聞いた鈴と同じ音。
珍しい音だから鈴とは思えなかったけど、確信できた。
透の家を出た舞は廊下を曲がり透の視界から消えた所で座り込んだ。
口を押さえ漏れそうになる声を必死に堪えた。
次から次へと涙が溢れては零れていく。
ーあの激しい雨の日、私の頭を撫でて置いて行ったお父さんの足音。
雨の音に紛れそうな声を必死に聞いていた。
何か揉めている声。
お父さんより、ずっと若い声。
お父さんじゃない声が声を荒げた。
その瞬間ドサッと何かが倒れる音。
同時に鈴の音がした。
雨の音が消える。
苦しそうに話すお父さんの声。
若い声の持ち主はお父さんに怒鳴ると走って行ってしまった。
私は声を出してお父さんを呼んだ。
返事は帰って来ない。
怖さが辺りを包んだ。
一気に涙が溢れる。
何度も何度もお父さんを呼んだ。
もしかしたら、幼き私の声はお父さんに届いていなかったのかもしれない。
また…さっきの足音が近付いて来た。
足音が何かを探してる?
また鈴の音。
何かを拾ったのだろうか?
「パパ?」
恐る恐る声出した。
足音の持ち主は私に気付き少し近付いた。
けれど、その足音はまた離れて行った。
どのくらい経ったのか、足音は再び聞こえることはなく、私はお父さんの約束を破り、その場から動いた。
ゆっくり歩き出す。
お父さんの声がしていた場所へとすり足で近付く。
何歩か歩いた所で何かに躓き転んだ。
持っていた傘がふわりと手から離れた。
すぐに体は雨で濡れていく。
手探りで躓いた原因を探す。
指の先に温かい何かがあたり、絡んで来た。
水じゃない、生温い液体。
鼻に持っていき匂いを嗅いだ。
怪我をした時に嗅いだ匂いと同じ。
血だとわかる。
急いで手探りをする。
手がお父さんを見つけた。
「パパァァ!!!」
お父さんは何も反応してはくれなかった。
お父さんの胸に抱きついた。
呼吸で動くはずの体がピクリとも動かない。
大声で叫んだ。
誰でもいいから、助けて欲しくて何度も何度も叫んだ。
「キャーー!!」
女の人の叫び声。
「パパを助けてっ!!」
救急車とパトカーのサイレンが聞こえる。
あの雨の日。霧がかかったような視界で視力なんてあるようでない状態だった。
音だけが私の支えだった。
昨夜降りしきる雨の中で鍵を出した、あの時、奥にしまいこんでいた記憶が目を覚ました。
聞いた事がある鈴の音。
まさかそんな事あるわけないと思った。
叔父さんが寝た後何度も鈴の音を聞いた。
自分の記憶を間違いだと思いたかったから。
けれど、その行為は決定付けただけだった。
聞けば聞くほど、あの時の音と重なって行く。
最近手にしたんだと聞きたかったのに、小さい時からずっと付けてるなんて…。
あの雨の日から、雨の音を聞くと思い出していた鈴の音。
私の記憶が間違ってるなんて、ない。
じゃお父さんを殺したのは…深海さん?
そんな初めて愛した人は自分の家族を奪った人?
「そんな…。」
舞は泣き止むことが出来なかった。
透に言ったけれど学校には行けなかった。
フラフラと力なく家路に着いた。
母親は仕事で誰も居ない静まり返った家。
玄関を開けると、そのままリビングに入り仏壇の前に座った。
「お父さん…私どうしたらいい?」
位牌の父親は何も言ってはくれない。
「私…あの日から抜け出せないでいるみたいだよ。」
舞は泣いても泣いても止まることのない涙流した。


