水無月の最後の言葉、心底ゾッとした。
「露李、大丈夫か?」
優しくかけられた声にビクッと肩を動かした。
「大丈夫だよ」
言葉とは裏腹に声が震えていた。
疾風は困ったように眉を下げる。
「なぁお前─風花姫っつー理由以外に、水無月に何か狙われる心当たりあんのか?」
理津の紫の瞳が露李を見つめている。
──自分が、神影以外の力を持っているなど。
言えるわけがなかった。
あの日の記憶が甦ってきてしまう。
『キャアアアア!!』
『化け物!!』
『貴女の暴走を防ぐために、今からここに拘束します。よろしいですね?』
「ううん。分からない」
「そうか」
「何にせよ、念には念をですね」
静が締め括る。
そのまま露李が押し黙っていると、理津が気まずそうに口を開いた。
「その、悪い。あんな言い方して─言い過ぎた。お前が道具とか思わないっつーこと、分かってるから」
「大丈夫…だよ。気にしないで」
胸が痛くなった。
己の口からついた嘘が、毒のように心に広がっていった。


