「お前、その目は……」
金色に染まった露李の瞳に星月夜が飛び退いた。
「どうして、避けるんですか。ほら、戦いましょうよ。そのつもりだったんでしょう?」
「本当に神影の者か?」
怪しむような表情に、露李はふっと笑い声を漏らす。
「敵なのに私から逃げるんですか?私は正真正銘神影の血筋ですよ、髪の色を見たでしょう?」
神影の直系を表す明るい栗色の髪は紛れもなく彼女のものだった。
とはいえ、全ての髪がこの色なのは露李しかいなかった。
他の者は一房だけなど、あくまで部分的なものだった。
「よく誰にも知られないで過ごしていられたね」
「一度、知られそうになりましたが。母が早急に皆の記憶を消したので」
今となっては母と呼ぶこともできない。
その後のことは、思い出したくもなかった。
前ぶれなく、水無月が露李に刃を向けた。
ガキン、と金属が触れあう音。
普通の成人男性の力にも敵うはずがないのだが、露李の刀は水無月のそれを防いでいる。
魂を蝕まれそうなほどに輝く雹雷鬼。
神聖で、汚れを知らない光を放っていた。
「君、まさか……」
水無月が少し驚いた顔をする。
「──もうダメみたいだね」
にこやかに言ってのけた通り、露李の体はもう限界だった。
神影の力が無いのに札を五枚発動させ、自分でも何か知り得ない力を行使したのだ。
間髪を入れずに吹き飛ばされてしまった。
髪の色も目も、元に戻った。
「ねぇ君、もしかして」
霞む視界で、水無月が泣きそうな顔で笑うのが見えた。


