熱風が爆発したかのように吹き荒れ、邪神を焼いていく。
露李と奴らの間に結界が現れ、眩い光が視界を奪う。
付喪たちが光の中に現れた紫の幻影を凝視しているのを最後に確認し、走り出した。
早く、早く帰らなきゃ。
誰かと合流しなきゃ───。
「逃がさないよ」
耳元で、声が聞こえた。
「嘘っ!?」
「君のお仲間に会ってないじゃん」
心から楽しそうな声。
ああ、駄目だ。合流しなきゃだなんて。
来ちゃいけない。この人の狙いは私じゃない。
じゃあ何が目的なの──?
「何が狙いなの」
水無月はにこりと笑う。
「狙いかぁ。最終的には花霞なんだけどね」
「花霞を知っているの…?」
花霞は神影と守護家の間でしか知り得ないものだ。
「どうしてっ、」
「どうして、だと?」
低い声が闇に響いた。
水無月と露李が同時に声の方を向く。
「あれはお前やあやつらのような若輩には過ぎたるもの。有明様のように力のあるお方が持つに相応しいものだ」
「あれ、星月夜じゃない。どうしたの?」
夕闇からがっしりした男が出てきた。
赤髪を一つに束ねた、この間も水無月と一緒にいた男で
ある。
「お前たちが我らに花霞を渡すと言うのであれば、もうここに近づくことはない。有明様が花霞をお使いになるのであらば我らはお前たちに用が無くなるからな」
それは、血の契りを断つということだ。
守護者たちの呪縛も、自分の呪縛も解ける。
もう彼らを死と隣り合わせにしておくことはない。
「どうだ?花霞の封印やら何やら、お前たちにはいささか荷が重いだろう」
揺れている。
しかしそうすれば古代から続く今までが全て無かったことになってしまう。
露李はぎゅっと拳を握り締めた。


