隠し通してきたことを、こんなやつに知られるなんて。
「ちょっとくらいは手応えあるといいんだけど」
「手応えどころか何も感じられなくなるわよ」
強気だなぁ、と呟く水無月は余裕綽々だ。
自分には、どうしようもない。
皆が助けてくるのを待つしか──でもそれではダメだ。
せめて逃げる時間を稼げれば。目眩ましでも良い。
露李は制服のポケットに手を突っ込み、五枚の札の存在を確認した。
きっと逃げられるのは五枚を連続で発動させたときのみ。
──どうしよう。
露李は五枚を連続で発動させて気力を保っていられるかどうかが危ぶまれていた。
しかし、もうこれしか手立てがない。
「どうしたの?やっぱり一人じゃ無理かなぁ」
挑発されていることは分かっていた。
西日の境界線が消えた。
【喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい喰いたい】
ゾッとするような冷気と共に奴らが襲ってくる。
札を目の前に掲げた。
赤、緑、水色、黄、紫の五枚だ。
「疾風迅雷!旋風結華!文月真舞!陽蓮静穏!理津玲瓏!」シップウジンライ、センプウユイガ、フミツキシンブ、ヨウレンセイオン、リツレイロウ。
もう、自分の中にその言葉だけしか入ってこない。
精一杯の念力を送った。


