【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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とりあえず神社まで帰ろうと露李は歩を進めていた。

守護者たちが度々口にする、『道具』という言葉。

そんな風に彼らを見ることがなかった露李は困惑していた。

きちんと意思もあって話もできる人を、道具などと。

自分はそんな風に思ったこともなかった。

しかし、他から見るとそう扱っているのだろうか。

それに自分は彼等を理解しようとしていなかった。

自分の事ばかり考えていて、皆の優しさに甘えていた。

もう偽らなくて良いんだと調子に乗って、思ったことを口に出して。

自分が楽になりたいだけだ。

考えれば考えるほど、自分が嫌になる。


「あっれ、お姫様一人ー?」


妙に明るい声が降ってきた。

思わず足を止める。


「水無月さん!」


木の枝に見たくもない眼帯男が座っている。


「さん付けだなんて嬉しいねぇ。あれ?五人はどうしたのかな?」


探るような金眼に寒気を覚えた。
 

「貴方に、関係ないでしょう」


自分から思った以上に冷たい声が出たことに露李は内心驚いていた。


「あるんだよねーこれが。だってさぁ、戦力に関わってくるじゃん?そしたら俺もどのくらいの力で戦えば良いのか考えなきゃだし」


「どういう、」 


「俺は君の虫けら集団よりも遥かに力があるんだよ?手加減しなきゃ───」


水無月が心底楽しそうに笑う。


「死んじゃうでしょ」


露李が頭上を睨み付ける。

メラメラと怒りが煮えたぎってきた。


「あの人たちは負けません。それに、虫けらなんかじゃない!」


「そっか。違ったね」


あっさりと肯定されて、拍子抜けした。

しかし、それも束の間。


「あいつらはかけがえのない、立派な、君の道具だもんね?」


すぅっと頭が冷えた。

怒りではなく、侮蔑。


「──帰りなさい」


水無月が露李をまじまじと見た。

やはり自分は、この女を知っていると思った。

だが、そんなはずはないとも思った。


──俺の知っているあの子が、風花姫なわけがない。
あの子は力を持っていないはずだ。



露李から殺気に似た、冷たいものが流れ出ている。


「誰に命令してるのかな?」


「帰りなさい。ここは貴方が来るところではありません」


これは、神影家の力なのか。

水無月は目を細めた。


神聖で純粋な、これまでとは全く違う力。


「帰りなさい、もう貴方に話すことはありません」


「そうだね。ただ最後に、こいつの始末を頼むよ」


水無月が暗い木々の奥を指差した。