【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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「言い過ぎだ」


遠ざかるにつれ小さくなっていく露李の姿をチラリと見、疾風が言った。


「露李に道具だとかそんな発想がないことくらい分かってるだろ」


理津の顔が僅かに歪む。

分かっている。彼女が苦労してきたという事も。


「あぁそうだな。でもな、あいつは人間だ」


理津の言葉に静は表情を暗くした。


「…何が、言いたいんですか」


走りながらも理津が嘲笑う。


「はっ。所詮、神影の血を引こうとも──あいつは人間。俺らとは違う、それだけだ」


疾風も静も黙るしかなかった。

常々感じてはいたが、やはりその壁を越えられないことを。

露李が歩み寄ろうとしているのを知っていながら、どこか遠ざけてしまうことを。

一族から忌み嫌われていたのは同情するが、それ故に許されていた自由があったことを。

見せつけないで欲しい、と思っていた。

自分達は使命からも村からも逃れられないというのに、遥かに多くの"外"を知った露李を羨ましいと思っていることを。


───しかしそれでも、傷つけた。


初めて守りたいと、曇りのない笑顔を傷つけたくないと、そう思わせてくれた露李を。


それはひどく自分勝手だ。


三人の頭に、露李のあの刺されたような表情がやたらとちらついていた。