「この本、何?」
「あ?何か地下書庫で見つけた」
吸い付くような感触。
『助けて』
さっきの声が一層大きく響いた。
「これ、何っ…」
「どうした露李」
疾風が怪訝そうに露李を見る。
「手が勝手にっ」
パタンと表紙を開け、ページを捲っていく。
『風花姫になる覚悟はありますか』
私はもう風花姫です。
正体の分からない声に返事をする。
『─風花姫になれますか』
な、れる?
私が風花姫になることはもう、決まったことなのに。
『風花姫になる覚悟はありますか』
そんなの。
『──全てを知らなければ、守ることはできない』
守りたいもの。
守りたいものは。
「っ露李!」
ガクンと体を揺さぶられ、我に帰った。
「疾風」
「大丈夫か?」
落ち着いているように見える疾風の目が揺れている。
「大丈夫」
ふにゃっと笑う露李に安堵する三人。
全てを知る。
その言葉が妙に引っ掛かって仕方がなかった。


