【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

「こんの馬鹿!!」


鈴の音のようだったはずが、ドスの効いた声が図書室に
響いた。


「いってぇ!!」


背の高い理津が頭を押さえてうずくまる。


「何の早業だ、今の」


ぽかんとして疾風が呟いた。

静にいたっては露李を見、理津を見るという作業を繰り返すばかりである。


「そんなくっだらない事で殺気出してんじゃねーわよ!



露李の言葉が荒れるのは珍しいことだ。

肩を震わせて立っている。

手には理津が持っていた本。

猫派発言を理解してすぐに奪い取り、振り下ろしたというわけだ。

疾風の言うところの《早業》である。


「心配して損した!ほんっと、損!」


「露李先輩?落ち着いて……」


「何かに乗っ取られたかと思ったよ!何なの、ほんと損した!」


ああ、ダメだな。

思った瞬間、我慢していたものが目から滑り落ちた。


「露李てめぇ泣いてんのか?」


理津が目を丸くして立ち上がる。


「汗です!」


「秋の夕方に何言ってやがる」


理津がとんでもない言い訳に苦笑した。

そして、露李の頭に手を置く。


「居なくならないで」


露李の気持ちが理津たちに痛いほど伝わってきた。

彼女が母と呼び慕ってきた人はもういないのだ。


「居なくなるわけねぇだろ。こんな危なっかしい姫さん置いて」


ほっと心が緩んで、そして。


「……なぁ疾風、俺睨まれんてんだけど」


「当たり前だ。早く謝れよ」


ギロリと睨んだ。


「悪ぃ」


「ん」


和解が済んだ後で、露李はふと自分の手元を惹き付けられるように見つめた。