一瞬の隙をついて静が輪から脱け出してくる。
「露李先輩、疾風先輩!ご足労すみませんでした、帰り
ましょう!」
意気揚々と歩き始める静と、当たり前のようにそれに並ぶ疾風。
呆気にとられながら我に帰り、露李もそれに続く。
「これ毎日なの?」
「そうですね、露李先輩がいらっしゃってからは割りとそうかもしれません」
にこにこと説明する静に申し訳なくなってしまう。
「ごめんね、何か」
「そんな、気にしないで下さい!僕、風花姫の送迎役を仰せつかえて誇らしいんです」
完璧すぎる敬語に疾風と露李は苦笑だ。
静の真面目な性格が今は女子たちを振り払えない元凶だと本人に言ったらどうするのか、知りたいところである。
優しく可愛らしく、かつ凛々しい美少年は当然のように人気が出る。
「疲れてるとこ悪いが静、図書室行くぞ。理津が図書室に入り浸ってるんだよ」
疾風がげんなりと言った。
「ええ、大丈夫です」
「静くん疲れたでしょ、大丈夫?」
露李が訊ねると、静はふんわりと笑った。
「長谷川さんも池田さんも心配してくれてるんです、きっと。だから疲れるなんてこと無いですよ」
あ、だめだ。
露李は静からバッと顔を背けた。
──これは、母性本能をやられる。


