*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
「んんんんー……」
「何唸ってんだ?」
放課後。
教室で唸る露李に、送迎係の疾風が声をかけてきた。
未琴に覚醒を急ぐようにと言われてから二週間が経とうとしていた。
「覚醒、って言っても何したら良いか分かんなくて。ここ最近頑張ってはいるけど」
「頑張るって何してるんだ?」
ぐ、と言葉に詰まる。
「海松ちゃんと術式の練習とか、かな」
「…まじかよ。それはお前…未琴様の作った札とかを唱えてる、とかじゃないよな?」
「え」
その通りすぎて肯定しにくいんですが。
「あれはな、それまでの儀式すっ飛ばした上に誰でも出来るように工夫してあるんだよ。護身術的な」
「嘘っ!?」
「おま、何だその顔」
よほど衝撃的な顔をしていたのだろうか。
疾風が全力で引いた顔をする。
「だって……え?」
疾風の顔を見上げた所で、露李がその先を凝視した。
「何だ?」
「いや、疾風。後ろ後ろ」
透明だが綿毛のような物体が疾風の背後に浮かんでいる。
「は?──ああ」
別段驚いた様子も無いようなので気を取り直して尋ねる。
「それ、何」
「この辺りの霊だな、力の弱い」
霊。霊って。
「幽霊?」
「あー、まぁそんなもん。さっき言ったけど邪気とかは無いから怖がる必要は、」
今度は疾風が言葉を切る番だった。
いや、こいつ何で生き生きしてんだ。
怖がると思っていたはずの露李は怖がる様子などつゆほども見せず、むしろ目をキラキラさせてその霊魂を眺めている。
「何でそんな嬉しげなんだよ」
「私、霊が見えたの初めてなの」
「そうなのか」
「うん、やっぱり修行してて良かった」
『根拠が欲しかったから』
露李の言葉が疾風の脳裏によぎる。
「私、皆を守るからね」
疾風がふっと笑った。
「お前を守るのが俺らの仕事だろ。守護者が守られてどうすんだよ」
「守られっぱなしは性に合わないの。守護者のみんな以上に強くなってやる」
「俺らの立場は」
「え?クビ」
すまして言い放った後、ついに我慢できなくなって吹き出した。
誰もいない教室で笑う二人はさぞ異様に見えただろう。
しかし、そんなことは気にならなかった。
「大丈夫だよ、そんな気張らなくてもお前は立派な風花姫だ」
疾風が優しく言った。
「ありがとう」
素直に嬉しいと思った
。
居場所を再確認できたようで、胸の奥が温かい。
「そろそろ帰ろっか」
「ああ」
「理津は?」
「図書室行ってくるってよ」
意外だ。
「静くんが遅いのも珍しいけど」
露李が物足りなさそうに呟いた。
「あいつは…まあ、行きゃわかる」
ニヤリと笑った疾風に首をかしげながら、露李は教室を出た。
「んんんんー……」
「何唸ってんだ?」
放課後。
教室で唸る露李に、送迎係の疾風が声をかけてきた。
未琴に覚醒を急ぐようにと言われてから二週間が経とうとしていた。
「覚醒、って言っても何したら良いか分かんなくて。ここ最近頑張ってはいるけど」
「頑張るって何してるんだ?」
ぐ、と言葉に詰まる。
「海松ちゃんと術式の練習とか、かな」
「…まじかよ。それはお前…未琴様の作った札とかを唱えてる、とかじゃないよな?」
「え」
その通りすぎて肯定しにくいんですが。
「あれはな、それまでの儀式すっ飛ばした上に誰でも出来るように工夫してあるんだよ。護身術的な」
「嘘っ!?」
「おま、何だその顔」
よほど衝撃的な顔をしていたのだろうか。
疾風が全力で引いた顔をする。
「だって……え?」
疾風の顔を見上げた所で、露李がその先を凝視した。
「何だ?」
「いや、疾風。後ろ後ろ」
透明だが綿毛のような物体が疾風の背後に浮かんでいる。
「は?──ああ」
別段驚いた様子も無いようなので気を取り直して尋ねる。
「それ、何」
「この辺りの霊だな、力の弱い」
霊。霊って。
「幽霊?」
「あー、まぁそんなもん。さっき言ったけど邪気とかは無いから怖がる必要は、」
今度は疾風が言葉を切る番だった。
いや、こいつ何で生き生きしてんだ。
怖がると思っていたはずの露李は怖がる様子などつゆほども見せず、むしろ目をキラキラさせてその霊魂を眺めている。
「何でそんな嬉しげなんだよ」
「私、霊が見えたの初めてなの」
「そうなのか」
「うん、やっぱり修行してて良かった」
『根拠が欲しかったから』
露李の言葉が疾風の脳裏によぎる。
「私、皆を守るからね」
疾風がふっと笑った。
「お前を守るのが俺らの仕事だろ。守護者が守られてどうすんだよ」
「守られっぱなしは性に合わないの。守護者のみんな以上に強くなってやる」
「俺らの立場は」
「え?クビ」
すまして言い放った後、ついに我慢できなくなって吹き出した。
誰もいない教室で笑う二人はさぞ異様に見えただろう。
しかし、そんなことは気にならなかった。
「大丈夫だよ、そんな気張らなくてもお前は立派な風花姫だ」
疾風が優しく言った。
「ありがとう」
素直に嬉しいと思った
。
居場所を再確認できたようで、胸の奥が温かい。
「そろそろ帰ろっか」
「ああ」
「理津は?」
「図書室行ってくるってよ」
意外だ。
「静くんが遅いのも珍しいけど」
露李が物足りなさそうに呟いた。
「あいつは…まあ、行きゃわかる」
ニヤリと笑った疾風に首をかしげながら、露李は教室を出た。


