「ほら、大丈夫だったでしょ?」
部屋を出るなり露李が微笑みながら言った。
「どこがだ、バカ」
結が呟く。
「バカ、って…」
露李は唇を尖らせた。
「ごめんな」
「え?」
言われた意味が分からない。
答えたのは疾風だ。
「俺たちは人間じゃないから、どこかでボロが出たりして気味悪がられることもよくあるんだよ。そういうとき未琴様は気を遣ってくれてたから、俺たちには未琴様に恩がある」
──また。そんな諦めたみたいな、線を引くみたいな言い方。
「だから、あのとき逆らえなかった」
露李が、目をつり上げた。
「謝らないで。私は皆にそんな顔して欲しかった訳じゃない。それに私は良かったと思ってるから」
「は?」
理津は訳が分からない、という顔だ。
「こうして風花姫としてここにいる根拠が欲しかったから」
はあぁぁぁぁ、と長い長いため息が聞こえた。
「結先輩?」
「負ける、お前。ありがとうな」
振り返った結が露李をグシャグシャ撫でた。
「何ですかっ!?」
「あーあー、うるせー。ほら飯食いに行くぞー」
そういえばご飯、食べてなかったな。
海松ちゃん待ってるかな。
「そっすね、海松も待ってるはずです」
「大丈夫ですか、露李先輩?」
「うん!」
「あー、あのおばさん怖いよねー」
「あの人おばさんとか言って大丈夫なのか?」
好き勝手に話し出す五人を見て、露李は嬉しそうに笑った。


