その頃、露李は、海松のお手製のデザートを前に舌鼓を打っていた。
「美味しい!」
「お疲れだろうと思いまして。気に入って頂けて良かったです」
あんみつ、涼やかなゼリー。
さらっとした口当たりと爽やかな甘さが心地好い。
「露李様も、皆様も少し眠ってくださいな。その間に私は準備をして参りますので」
「準備ぃ?何のだ」
理津が怪訝そうに尋ねると、文月が小さく笑った。
「新学期だよね」
当たり前のように言われたその言葉に、疾風と理津はがくっと姿勢が傾ぐ。
「…え?先輩たち忘れて…」
素直な静が何ということもなく二人を見る。
「すっかり忘れていた」
真面目な疾風には珍しく、露李は目を丸くした。
「えー、どうして?」
「考えることが多すぎだ…」
隣で今にも死にそうな顔をしている理津と大して変わらない顔色で言い訳。
「何?私が手伝えること?」
「どちらかというとお前だ馬鹿っ」
八つ当たり気味な疾風に、何よ、と口を尖らせる。
横で何かを察したような海松は滅多に見られない企み顔。
「うふふ、面白いことになっていますね」
「でしょ?俺としては面白くも何ともないけどね」
状況を心底楽しむ海松だった。


