車の音が遠ざかるのを待って、結は水無月をじっと眺めた。
「…何だ。貴様ごときがこの俺をじろじろと眺めるなど、不愉快極まりない」
「おー何か久しぶりだなその感じ」
「うるさい」
どこかふて腐れた様子の水無月。
ゆるゆると生暖かい風が吹いた。
露李とよく似た容姿の男が、口元に笑みを浮かべる。
「何かあったんだろお前。どうしたんだ?」
沈黙が続く。
水無月は何か言おうと口を開きかけて、やめる。
しばらくして真紅の瞳が結に真っ直ぐに向けられた。
「露李がいない間、考えた。きっとこの俺の想いを告げたら、あの子は困るだろう。そんなことは分かっている──でも、それ以上に」
そこで言葉が切られる。
結は静かな眼差しで何も言わずに立っていた。
「瀧谷を庇うあの子を見て思った。神影一族は露李にとって家族でもなんでもない。家族になれる存在がいるとすれば、俺しかいない。母親の存在が露李を支えていたのに、もういない」
「なあ、水無月。未琴さまは──」
「だから、決めた。俺なりの愛し方をする。あの子の傍にいること。それだけだ」
結はまた言葉をかけようとして、口をつぐんだ。
水無月の、見たこともない優しい表情。
清々しいような顔。
「……そっか」
「間違えるなよ、愛しているには変わりがないからな」
「分かってるよ!」
ふっと水無月はおかしそうに笑い、ゆっくりと歩き出した。


