目を合わせることをしなかった香月。
「ごめんなさい……」
怖かったのだろう。
目を合わせれば、正体不明の嫌悪感に襲われる。
気味の悪いことだったろう。
「私こそごめん。友達だったのに」
もうそれが過去形になっていることに気づいた香月は、唇を強く噛み締めた。
──当たり前、だ。私は露李様ではなく自分が可愛かった。
「さあ…そろそろ皆が起きてくる頃ね」
ぞろぞろと正気に戻りだした面々を満足げに見てから、露李は怪物にちらりと目をやり、目を閉じた。
「もう時間がない…」
浄化し続けているのに、薫の澱みは消えない。
「離せっ、離せえええええええ」
「か、薫さま!どうなさったんですの!」
野花が狼狽えて近寄ろうとするのを露李は手で制し、ため息をついた。
「近づくと危ない。それにしても…」
「出来損ないが!!出来損ないの娘は同じように穢れている!!!」
ぴくり、と反射的に反応してしまう。
「母様のこと?」
「あの出来損ないめ…いずれこの手で…」
ためだ。惑わされてはいけない。
そう思うのに、どうしてか心がいうことをきかない。
「う…何で」
頭が痛い。
額を押さえてしゃがみこむと、その背中に手が置かれた。
「露李先輩!!しっかりして下さい!」
「静くん…?」
「澱みの記憶に支配されてはいけません!自我を失うことになっても良いんですか!?」
澱みの記憶。
これが、薫の本心だというのか。
一際、頭が痛んだ。


