露李さん、とまた誰かの声が呼ばわった。
「野花さん。何?」
野花はカールした髪をいつものように弄ることもせず、真剣な顔で露李を見上げた。
「あの、どうしてかしら。私、いつもより貴女が嫌いではないの」
「ぷっ」
大真面目に聞いてくるので思わず吹き出してしまう。
しばらくして笑いを止め、少し滲んだ涙を拭きながら露李は微笑んだ。
「……うん。それをストレートに教えてくれるのが野花さんなのね」
「はい?」
「ああ、だから貴女って意地悪なことばっかりしてても周りに人がいたんだね。普通なら恐怖政治みたいな感じなのに、そうでもないし」
「露李さ……いえ、露李様」
野花は言い直し、露李の目を見た。
まだ混乱してもいるだろうに、真っ直ぐな光を宿していた。
「長い間…度重なるご無礼を、申し訳ございませんでした」
「え!?」
また突然の展開に目を丸くする。
だが、考えれば容易いことだった。
嫌みも何もかも直球なのが野花なのだろう。
露李はまたにっこり微笑んだ。
「うん」
そう言い、そして野花の後ろで目を見開いている少女を見据えた。
「香月。貴女、知ってたんでしょ?」
この術がどのような状況下で効果があるのか。
知っていたはずだ。


