遠ざかっていく。
神影家が遠くなっていくとともに、露李の過去も遠くなっていく。
「露李。平気か?」
「大丈夫です」
何となく言葉少なになり、外を眺める。
街の風景が途切れ、木々が多くなってきたとき───それは起こった。
「露李伏せろっ!」
突然、結が叫び反射で命令に従う。
緊迫した車内に鼓動も早くなる。
キィイイイ、と耳障りな音を立てて車が止まった。
急ブレーキが踏まれ、ほうっと瀧谷が息をついた。
「何があったんですか?」
「前に、桜木が飛び出してきたんです」
訊ねると、焦ったような声色で返事がくる。
「桜木が?」
「あいつ、何のつもりで……!」
恐らく桜木に向けられたであろう言葉。
露李は結と不思議そうに顔を見合わせ、そして唐突に車の扉の取っ手に手をかけた。
「おいっ、露李!」
「露李様!?」
躊躇なく飛び出した露李は、車の前に青い顔をして座り込んでいる桜木を見つけた。
「桜木!どうしてここにいるの!」
「露李、様…」
頑なに目を合わせない。
何かあるのだろう、と思いつつ駆け寄る。
「怪我は!?」
「だ、大丈夫です。止まってくれましたので」
「良かった……それより、何でこんなことしたの!」
桜木はくしゃりと顔を歪めた。
思わぬ展開に露李が固まると、肩に手がかけられる。
後ろに結を先頭に守護者たちが集まってきていた。
「露李様」
桜木が露李の手を両手で掴んだ。
まるで懇願するかのような仕草に驚く。
「なあに」
優しく訊ねることを心がけて声を発すると、桜木の着物の膝にぽたりと雫が落ちた。


