【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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 結局神影家の歪みが顕著になっただけで滞在時間が終わり、帰る段になってしまった。

二日目の昼過ぎ、何を成し遂げるでもなく縁側でお茶を飲んだりしているうちに時が過ぎていった。


「何か得たのか失ったのか……まぁとりあえず、帰りますか」


露李は苦笑いして門の前に立った。

一族総出で送り出してくれるようで、人が多い。

守護者達は警戒を強めつつ、露李は凛とした面持ちで一族に向き合う。


「それでは私は務めがありますので戻ります。皆様が平穏に過ごされることをお祈りしております」


腹が立つ人もいるが、死んでしまえとまでは勿論思わない。
不幸な目にも遭って欲しくはないけれど、ただ人を憎むようなことはやめて欲しい。


そう思えるのはきっと、神影の地で色々なものを乗り越えてきたからだろう。


「…露李様」


荷物を持ってくれていた桜木が露李の目を見ずに呟いた。

名前を呼ばれたことに少し驚いたが、露李は笑って彼女を見返す。

昨夜の静の話もあってか、彼女がこれ以上苦しまないことを願った。


──だってね、桜木。貴女のこと大好きだったの。


どんなに冷たい態度でも、優しい彼女を覚えているから。
桜木は唇を噛んで黙りこくった。


「なあに、桜木」


──桜木、貴女が私のことで何か苦しんでいるならね。

私のことなんか捨てて。



「──道中、お気をつけて」



やっとのことで絞り出した言葉は、それだけだった。

しかし自然と笑みが浮かぶ。


「うん。そうするわ、ありがとう」


じゃあね、とひらりと手を振ると、また袖を強く引かれた。


「桜木?」

「露李、様」


その手が小刻みに震えている。


「桜木、どうしたの?」

「…露李様。私たちが祝福としてお渡しした物は、外してください」


小さな声だった。


「え……?」


聞き返そうとしたが、さっと間に入るものがあった。


「桜木。そのように引き留めるものではありません」

「お祖母様……」

「露李さん、早くお行きなさい」


鋭い眼光に狼狽えると、結がさっと露李の肩を抱いた。

そのまま車へと促していく。


「待って、結先輩」

「ダメだ露李、何かおかしい」


行くぞ、とまた強く押されて渋々車に乗った。

景色が流れ屋敷が遠ざかっていく。

どこか不穏な気配に、露李は唇を震わせた。