「で、静。どーした?」
軽い口調で結が切り出す。
他の面々もじっと静を見つめた。
「さっき、桜木さんの様子がおかしかったですよね」
まずそこから問うと、結はこくりと頷いた。
「ああ。何かあるんだな、その様子だと」
「はい。…僕と桜木さんが一対一で会ったとき、あの方はすごく柔らかい表情で心も安定していました。ですが、露李先輩を見た瞬間に変わったんです」
「また心を読んだんだね、静?」
文月が眉間にシワを寄せた。
心を読むことができる能力を持つ静は対象に影響されやすい。
昔から静はよく、文月に心配されていたものだ。
えへへと笑って誤魔化し、再び口を開く。
「大丈夫です、僕も成長してますよ。…それで、何かこう──心が塗りつぶされるような。不自然な感情の変化でした。あれは普通の動きではありません、それに」
あまりに切なくて、静は言葉を切った。
胸が苦しい。
「桜木さんは……本心では、露李先輩を悲しませたりしなくないんだと思います。何か理由があるはずなんです。そうでなければあんな、あんな優しい表情は出来ません」
もし、何かの術をかけられていたとして。
彼女が望まないことをさせられていたのだとしたら。
ぎゅっと胸の辺りの服を握る。
──ああ、ダメだ。僕はやっぱり弱い。
守護者の誰よりも戦闘に向いていないし、脆い。
文月先輩に心配をかけるばかりで。
露李を守ることだけを考えるべきだと分かっているのに、桜木の表情が焼きついて離れない。
静が不甲斐なさに顔を歪めると、ぽんと頭に手が置かれた。
「しーずか。お前までそんな顔するなー」
結だ。
ぽんぽんと何度か頭を撫でてから、その手が離れていく。
顔を上げると、見慣れた頼もしい幼馴染みが笑っていた。
いつもの笑顔だ。
「お前は優しい。優しいから、関わった奴の不幸を放っておけない。それは悪いことじゃねーだろ?」
「僕は、」
「静は昔っから自分を過小評価してっけどなー、俺たちが一番お前の力を信頼してるぞ。いつも助かってる」
なあ、と結が文月の方を向いた。
「もちろん。…静、俺が心配してるのはね。頼りないからじゃなくて大切だからだよ」
「うわっ、歯が浮くぜ…」
「何か言った?理津」
「言ってないっす」
笑顔で威圧しながら文月も静の頭をわしゃわしゃと撫でた。
と、そこに疾風が歩み寄ってくる。
「…静。何を気にしているのかと思えば、そんなことだったのか」
「疾風先輩……」
「大丈夫だ。俺もいつもお前に助けられている」
仏頂面で言われて、少し笑った。
そしてまた理津が静の頭を撫でにきた。
「バーカ、何年一緒にいると思ってんだてめぇ」
静の張りつめた神経が緩む。
どうしようもなく嬉しかった。


