【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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 「あがったよー、ありがと理津」


風呂を出て、廊下で待っていた理津に声をかける。

入浴時の護衛は理津だった。

守護者はこれから交替で風呂に入り就寝、という手筈になっている。


「おう、何だちゃんと温まったか?お前すげぇ寒がってただろうが」


「うん。お湯熱めだったし大丈夫」


「俺らに気遣ってんじゃねぇだろうな。…ま、顔色も良いから問題ねぇか」


理津がポケットに手を入れて歩きだし、露李も続いて歩く。

遅い、と言われるのを予想していたので少し意外だ。


「何か意外と紳士ね理津って」


「は?今さらかよ。今まで俺が何人の女と付き合ったと思ってんだ」


「何人泣かせてきたかの間違いでしょ」


「何だと」


引きつった凶悪な笑みがこちらを向いたので笑って誤魔化す。

理津はどちらかというと先輩と付き合うことが多いらしく、内緒で何人か教えてもらって見たところ、色気のある大人な女性が好みらしい。


「高一のくせに生意気な」


「何の話だ」


と、溜め息をつかれてしまう。


「あーねえ今日は星が綺麗よ」


何とか話を変えようと空を指差してみる。

結が夜になって喜んでいたな、と思い出した。


「あぁ、結がオリオン座がどうのって騒いでたな。よく分かんねぇけど」


「結先輩ほんとに星とか好きだもんね。あ、そういや理津の趣味とか聞いたことなかったかも」


「趣味ぃ?特にねぇな。強いて言うなら…あ」


突然、理津が立ち止まって振り向く。

何か真剣な表情に息を飲んだ。

月明かりにその端正な顔立ちが照らされている。

理津は夜に映えるな、と思った。


「術で幽霊とか出して怖がらせたり、ホラー映画見て怖がってる奴を見てんのが好きだな」


「…キメ顔で恐ろしいこと言うわね。性格悪ー」


「お前に言われたくねぇよバーカ」


「バカ!?てか私性格悪くないしっ、ピュア界の王だし!」


「はあ…?お前たまに分かんねぇ表現するよな」


呆れたように笑いながらまた歩きだす。


「そんな言い回しが出来んなら、星じゃなくて月が綺麗ですねって言ってくれれば良かったのにな」


「何で?漱石とか好きだっけ?」


「…………地味に傷つくわー」


夏目漱石が好きな印象は無かったので、また意外なだけだったのだけれど。

理津は、へいへいと笑って露李の頭を軽く叩いてまた前を歩いた。