「わ…分かりません。どうしてそれが──」
「勿論、貴女の力は異質です。しかしながら、貴女を育てるという神託を受けたのも未琴です。そこからが全ての間違いでした」
「私を…育てることがそもそもの間違いであったと?」
「はい。ああいえ、貴女自身に責任はありません。子供に罪はない。しかし、育てるかどうかを決めたのは未琴です。髪も同じ色を持っているし、娘とするに申し分はありませんでしたが。『里の災厄』ですから」
声が出なかった。
里の災厄。昔から言われてきた。
「ですが、やはり未琴は欠陥品でした。自分の守護者も全て死に絶えさせ、貴女の守護者様まで攻撃するなど有り得ません。当然の報いです」
「え、は……?」
「情けない声をあげるのはやめなさい」
「で、でも……例えそれが敵だった人に殺されてもですか」
「貴女は道具に思い入れがあるのですか?」
───道具。
「娘でも、道具です。使えない道具など不要。違いますか?貴女は人の使い方をここで過ごす間に覚えたのではなかったのですか?」
違う。
人を使うということは、人を道具として扱うことではない。
分からない。
何も分からなかった。
「お祖母様は…母様も、道具だと?先代の守護者様が命を賭けて守った母様が死に絶えても良かったと仰るのですか…?」
否定してくれることを願った。
しかし薫は首を縦に振った。
「何を分かりきったことを」
どうしようもなく、冷たい。
驚きが隠せない。
隠さなくてはいけないと分かっているのに。
薫はさっと立ち上がり、露李を見下ろした。
露李のお茶はすっかり冷えてしまっていた。
「事情は分かりました。ありがとうございます。ここにいる間、以前と同じように過ごすのですよ」
そう言って守護者の方を向く。
「守護者様、失礼致しました。滞在中、ゆるりとお過ごしください」
深く頭を下げた薫の気配が消え、そして桜木たちの気配も消えた。
露李は呆然と自分の膝を見つめていた。


