風雅と大地が下りてきた。
「何やってるの、露李ちゃん」
大地の声が怒りを孕んでいる。
「俺はお前が自殺するつもりかと思ったぞ!」
朱雀が怒鳴った。
「露李お前な!四人が俺で十分だって気ぃ遣ってんだからな!少しは察しろバカ!」
風雅は露李の頭をグシャグシャに撫でる。
そうか、気遣っていたのか。
露李は撫でられながら風雅を見つめた。
四人が動く気配がないから、少し違和感があったのはそういうことか。
「ごめんなさい、私」
「いや、その、謝れとは言ってねーよ」
狼狽えたようにどもる風雅に、露李は首を傾げる。
「結はな、照れてやがんだよ」
薄笑いで水鳥が補足するが、よく分からない。
「照れてなんかねーっつの!」
風雅が叫ぶ。
「え?」
「ただ、その、あれだ!心配してくれた気持ちは嬉しいってことだ!…悪かったよ」
ますます分からない。
「結は負けず嫌いだからね」
あそこまで挑発したのは結の性格だよ、と大地が笑った。
「いやー、俺はお前が居なくなったときは死ぬかと思ったんだからな!」
ごめんなさい、とまた呟くと、朱雀と水鳥、知恩がばつの悪そうな顔をした。
「俺たちが目を離してたからこんなことになった。守れなくて、悪かった」
「すみませんでした、露李先輩。僕たちがきちんとしていなかったせいで…」
「…もうしねぇ。あんな辛い思いもさせねぇ」
最後の言葉で、思い出した。
忘れてたけど、私の記憶は。
全部全部、作り物───。
露李が唇を噛むのを、守護者たちは見逃さなかった。
風雅が露李の目線の高さに背丈を合わせる。
「そうやって抑えこむな」
翡翠の瞳で真っ直ぐ見つめられた。
逸らせない。
「だってそうしないと、そうしないと、叱られっ、」
あれだけ叫んだせいか、声が掠れる。
「もう誰も叱らない。俺たちはそんなことしない」
ひく、と息を飲んだ。
「俺たちは違う」
きゅうっと胸が痛い。目が熱い。
「だから、お前のままで良いんだ。『露李』でいろ」
その言葉に、自分の中のタガが外れたのが分かった。
「う、ううっ……」
幼子のような声が漏れる。
「うああああああああああ!」
ただひたすらに泣き続ける風花姫を、守護者たちは優しく見守っていた。