「みーるちゃーん!」
心細そうに戸口を掃いていた海松が、露李の声にパッと顔を輝かせた。
二人とも走り寄ろうとする。
「あ、露李先輩!」
慌てたような静の声が聞こえたが、勢いは止まらない。
しかし、
「わぷっ」
「あうっ」
何かにぶつかったようにはね飛ばされる。
見えない壁にぶち当たったようだ。
「いった!」
顔を撫でながら二人が立ち上がる。
よく見ると、透明な液体のようなものが屋敷全体を覆っていた。
「あー……私、結界お願いしたんだった」
「自分の言ったことまで忘れてんじゃねぇよ。解くから退いとけよ」
理津が露李を後ろに押しやり、静が前に出てくる。
その二人が手を翳すと、一瞬、辺りが紫と萌黄に光った。
ぱちんと音がして結界が解けたのが分かる。
「露李様!よくぞご無事で!」
長旅にから迎えるような口ぶりで海松が露李に抱きつく。
「ありがとう。…あと、ごめん。蔵の屋根、ぶち抜いちゃった」
「ええっ」
海松は驚いた声を上げて離れたが、すぐに笑った。
「貴女と皆さんが無事ならお釣りが返ってくるくらいです」
「いつも心配かけてごめんね。あと、兄様に治癒の術をかけて欲しいんだけど」
「あら、何か…まあ!どうなさったんですか!?」
水無月は嫌そうにしていたが、問答無用ですぐに海松が治癒を施していた。


