「兄様大丈夫?」
もう一度露李が訊ねると水無月は全然だよーと言って、ひらひらと手を振った。
疾風たちのところへ行っておけということらしい。
何か珍しいなあ、と不思議に思ったが先頭に戻る。
疾風と理津は立ち止まってから成り行きを見守っていたのだが、駆け寄ると笑って迎えてくれた。
「おーお帰り姫さん」
「え、ただいま?」
理津のからかうような声色に疑問系で答えると、疾風がぶはっと笑う。
何だか嬉しくなりながら、
「疾風は最近よく笑うよね。仏頂面キングだったのに」
と言うと、理津が横で笑い出す。
「…誰が仏頂面キングだ。お前が阿呆なことばっかりするからだろうが」
そう言いながら真顔になる疾風だが、目は笑っている。
露李もつられて笑う。
「水無月、相当疲れてねぇかアレ」
不意に振り返り、後ろ向きに歩きながら理津が驚いたように呟いた。
「そうなの。大丈夫かな、兄様、私に力くれたからしんどいのかも…」
露李も振り返って結と静に支えられて歩く水無月を窺う。
少し離れた場所で、こっち向くな水鳥っ、と喚いている。
「頑張り屋だから見られたくないんだろうなあ」
そう言うと、一緒に水無月を見ていた疾風が露李の頭を片手で掴んで前を向かせた。
「何すんの疾風」
「…あれはそういうのじゃないと思うぞ」
「え、どういうこと?」
「お前には、まあ…言えないよな。あっち向いてろとか」
全く訳がわからない。
眉間に皺を寄せて考え込むと、理津が小突いてくる。


