「に、兄様大丈夫?」
あわあわと駆け寄る露李を見て一瞬で笑顔になる水無月だったが、邪気の中に居続けた後なので疲れが顕著に表れていた。
少し申し訳なくなる。
「大丈夫だよ。よっと」
軽やかに立ってみせたが、よろけてしまう。
咄嗟に結と静が支えに回ったので倒れずに体勢を立て直す。
「ごめん、水無月」
「お前……わざとだろう……」
「え?そんなことないって」
「早く止めなかった方だ!」
「あー、でも。水無月って見た目が王子だからさ、花も似合ってたよ」
苦し紛れの言い訳は通じなかったらしい、何が起こったのか分からずに話を聞いていた露李が文月の前に走ってきた。
露李ちゃんは大丈夫なのかな、と思うものの水無月ほどではないようで、腰に手を当てて見上げて来た。
「文月先輩~?」
「何かな?」
「何かな、じゃないですよ!何てことしてくれてんですかーっ」
ああ、可愛い、と思いながら、ごめんごめんと謝る。
露李は疑わしそうにもう一度見てから、文月の肩に手をかけて、
「絶対思ってないです!兄様が情けないことになっちゃったじゃないですかっ」
と言う。
離して離してっ、露李ちゃんっ、と心の中で絶叫していると不意に手が離された。
「……死ぬかと思った」
疾風と理津の元に戻っていく露李を見ながら、呟く。
「そんなに露李が怖かったのかー?大丈夫だぞ、そんなに怒ってねーよ」
結が慰めてくれるが、かえって脱力する文月だった。


