結が指差した方を振り返る。
「え、これ俺?」
いつの間にか自分の周りに浅葱の気が満ちていた。
その光の中から、ぽんっという音を立てて花が生み出されている。
真っ白な雪の上に色とりどりの花が大量に落ちていた。
「お前以外誰がいるんだよ!」
そう言っている間にも花はポンポンと咲き乱れる。
「あはは、別に害はないじゃない」
「ある!!」
威勢良く言ったのは水無月だ。
えーなに、とそちらを見ると、雪の上で花と格闘していた。
身体に花が引き寄せられ、とれないようだ。
静も加わって剥がそうとするが、頑として離れようとしない。
「…貴様、これを止めろ!」
ハイハイと近寄って見てみると、水無月を覆いつつある花は青色や紫色をしている。
「竜胆か」
「何でも良い!早く止めろ!」
「ねえ水無月のとこの家紋って、竜胆だったよね?」
「そうだっ、殺す気か貴様!」
ジタバタ足掻いている水無月は面白かったが、ここまでだろう。
「あの、先輩、これ何が……」
露李も驚きながらこちらに来たので、まずい、と少し焦る。
花は冬のものが多いが、その中でも竜胆が生まれたのは水無月の力に反応したからだろう。
露李にも反応する可能性は多分にある。
「おい貴様、早くこれを止めろ!無理矢理これを斬り捨てたら露李に怒られるだろうがっ」
「分かったよ」
笑って手を翳す。
すぐに花が光に包まれ、消えた。
中から息も絶え絶えな水無月が現れる。


