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 蔵を出た途端、そこかしこから安堵の溜め息が聞こえてきた。


「うわー疲れたぁー!」


その溜め息に気が抜けて思わず叫ぶ。

水無月が背後でくくっと笑っている。

露李が砂で汚れるのにも頓着せずにバッタリ地面に寝転ぶ。

木や氷が浅葱色に包まれたかと思うと、そのまま弾けて光の粒になり、霧散した。


薄く空に張られていた紫と萌黄が、ベールのように溶けてなくなる。


疾風と文月が駆け寄ってきた。

結はすたっと近くに着地する。


「お疲れ様、無事で良かったよ」


文月が上から見下ろし、にっこりと笑う。

ああ、相変わらず綺麗な顔だな、と思いながら伸びをした。

その弾みで手に持っていたものがカランと転がる。


「…何だ?ってお前これ花霞じゃないか。何、持ってきてんだよ」


どうやら傍で片膝をついていた疾風の足に当たったようだ。


「もう触って大丈夫なのか?」


「大丈夫大丈夫。これ浄化したら単なる弓だもん」


ほら、と持ち上げると疾風は訝しげながらも手に取った。
特に何かが起こることもなく、その表情が安心したように緩んだ。

横に腰を下ろした水無月がぽんぽんと頭を撫でて労ってくれる。

が、その顔にも疲労が十二分に表れていた。


「兄様ごめんね、ありがとう」


水無月は少し驚いた顔をしながら、頷く。


「これで一件落着、だな!」


結が後光がさしそうな笑顔で手を差しのべてくれた。

はい、と言いながら立ち上がる。


「一件、かな?」


「どこからどこまでが一件なのか、分からないが。本当に良かった」


文月がからかい、疾風が露李に滅多に見せない笑みをくれた。