***
「で?話って何だ?」
一段落ついて、海松の淹れてくれた緑茶を飲みながら結が露李に尋ねた。
前以て話があると伝えていた。
「未琴様をきちんとして、それから花霞を消失させようと思います」
しん、と沈黙が広がった。
「きちんとするって、どんな風に?」
文月が静かに尋ねた。
露李は穏やかに微笑む。
「一度、神影家に戻ろうと思います」
「ちょっと待て。お前は何をする気だ?」
「そうだ、前みてぇに──」
疾風と理津が身を乗り出して反対したが、彼女の表情を見て押し黙る。
「大丈夫だよ。私はもう皆から離れない」
そう言うのが苦しかった。
離れたくはない。
しかし、それは彼等を自分に縛りつけることを意味するのだ。
「でも、やっぱり未琴様は前風花姫だし。あの家でも発言力もあったし、ちゃんと報告しないわけにはいかないと思う。それに、向こうに報告したら葬儀の手配とか色々やってくれるはずだし」
葬儀の手配、というのが自分で言っておきながら妙に現実的だった。
「里の方では、神影家は色々な所を牛耳ってる。冠婚葬祭、あそこは全部自分達で済ませちゃうの。当然、葬儀屋だって」
水無月が湯呑みをテーブルに置いて、露李をじっと見た。
「露李。自分で何を言ってるか、分かっている?お前があそこへ行きたいはずがないと俺は思っていたけど」
「うん…でも、あまりにも報告しなかったから。それに未琴様が亡くなってから随分経ってるんだよ?隠蔽とか言われたら面倒じゃないかな」
自分が母親だと思っていた女のことを話しているのに、全くの他人事のようだった。
何だか悲しくなる。
「露李様、そこは問題ありません。術をかけて安置所で保管しておりますので、あの方は今しがた亡くなったような状態で維持してあります」
「うん、でも…守護家には知らせたのを神影には知らせなかったのって」
まずいな、と思っていた。
「別に俺達は特に報告の有無を気にしてるわけじゃねーぞ。露李、お前のことだ。大丈夫なのかー?」
「私は大丈夫です。むしろ皆が」
軽い口調で訊いてくる結に言いかけると、彼は違うと首を振る。
「皆が、じゃなくて。『露李が』大丈夫なのかと聞いてる。そりゃ俺達だってお前を一人で行かせるつもりはねーよ?けど、お前に我慢させてまで辛いところに行く意味は無いと思ってる」
守護者たちが一様に頷いた。
水無月は心配そうに露李を見つめている。
「兄様と、皆がいるなら。私はきっと大丈夫だと思うんです」
はっきりとそう告げる。
守護者たちは少し驚いたように目を見開いてから、表情を和らげた。
「…じゃー決まりだな。でも、花霞の方が先の方が良いんじゃねーか?」
「それは俺も思う。この先報告とかいちいち行くの嫌だし、一気にいきたいしね」
文月が結に同意し、露李も笑って頷いた。
「消失ってお前、どうするか分かるのか?」
「力を解放して、吸収の力を使おうと思う」
皆が微妙な顔をした。
「で?話って何だ?」
一段落ついて、海松の淹れてくれた緑茶を飲みながら結が露李に尋ねた。
前以て話があると伝えていた。
「未琴様をきちんとして、それから花霞を消失させようと思います」
しん、と沈黙が広がった。
「きちんとするって、どんな風に?」
文月が静かに尋ねた。
露李は穏やかに微笑む。
「一度、神影家に戻ろうと思います」
「ちょっと待て。お前は何をする気だ?」
「そうだ、前みてぇに──」
疾風と理津が身を乗り出して反対したが、彼女の表情を見て押し黙る。
「大丈夫だよ。私はもう皆から離れない」
そう言うのが苦しかった。
離れたくはない。
しかし、それは彼等を自分に縛りつけることを意味するのだ。
「でも、やっぱり未琴様は前風花姫だし。あの家でも発言力もあったし、ちゃんと報告しないわけにはいかないと思う。それに、向こうに報告したら葬儀の手配とか色々やってくれるはずだし」
葬儀の手配、というのが自分で言っておきながら妙に現実的だった。
「里の方では、神影家は色々な所を牛耳ってる。冠婚葬祭、あそこは全部自分達で済ませちゃうの。当然、葬儀屋だって」
水無月が湯呑みをテーブルに置いて、露李をじっと見た。
「露李。自分で何を言ってるか、分かっている?お前があそこへ行きたいはずがないと俺は思っていたけど」
「うん…でも、あまりにも報告しなかったから。それに未琴様が亡くなってから随分経ってるんだよ?隠蔽とか言われたら面倒じゃないかな」
自分が母親だと思っていた女のことを話しているのに、全くの他人事のようだった。
何だか悲しくなる。
「露李様、そこは問題ありません。術をかけて安置所で保管しておりますので、あの方は今しがた亡くなったような状態で維持してあります」
「うん、でも…守護家には知らせたのを神影には知らせなかったのって」
まずいな、と思っていた。
「別に俺達は特に報告の有無を気にしてるわけじゃねーぞ。露李、お前のことだ。大丈夫なのかー?」
「私は大丈夫です。むしろ皆が」
軽い口調で訊いてくる結に言いかけると、彼は違うと首を振る。
「皆が、じゃなくて。『露李が』大丈夫なのかと聞いてる。そりゃ俺達だってお前を一人で行かせるつもりはねーよ?けど、お前に我慢させてまで辛いところに行く意味は無いと思ってる」
守護者たちが一様に頷いた。
水無月は心配そうに露李を見つめている。
「兄様と、皆がいるなら。私はきっと大丈夫だと思うんです」
はっきりとそう告げる。
守護者たちは少し驚いたように目を見開いてから、表情を和らげた。
「…じゃー決まりだな。でも、花霞の方が先の方が良いんじゃねーか?」
「それは俺も思う。この先報告とかいちいち行くの嫌だし、一気にいきたいしね」
文月が結に同意し、露李も笑って頷いた。
「消失ってお前、どうするか分かるのか?」
「力を解放して、吸収の力を使おうと思う」
皆が微妙な顔をした。


