【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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 朝食を食べ終わり、秋雨たちを見送るために皆で外に出た。


「困ったことがあれば、すぐに駆けつける」


頼もしい秋雨の言葉。

小さく笑って露李に頭を下げた。


露李も笑って返す。

また会える日を願って。

泣き出してしまった宵菊をなだめ、睡蓮が花を沢山くれるのを受け取る。


「じゃーな!」


守護者を代表して結が握手をし、水無月はふいっとそっぽを向いた。

相変わらずだなと笑う秋雨に睨みをきかせ、ふと空を見上げる。


「ねえ、何かゴロゴロ言ってる」


「星月夜だ。しまった、あいつはまた──」


どおおん、という大きな音とともに見たことのある姿が下りて──降ってきた。


「うお!?露李掴まれ!」


慌てて結が露李を抱いて飛び退き、水無月が構えた。

もうもうと上がった砂煙から星月夜の赤髪が現れた。


「ああ!おはよう!久しぶりだなあ、姫さん!」


相変わらずのはちまき姿で、人の良さそうなオッサンという笑顔。

露李がほっとして歩み寄ろうとした瞬間、水無月が星月夜に飛びかかる。 

激しい動きをしたというのに優雅で、しかも冷気が出ているのではないかと思うほど冷たい眼差しだ。


「ねえ、何てことしてるわけ?星月夜、露李に何かあったらどうすんの?」


「おお、水無月…すっげえ剣幕だな…姫様がどうかしたか?」


「あんたが降ってきた場所に今しがたいたんだよ!ふざけてんの!」


「それは──それは、うん。すまない」


「それで済むと思ってる?」


「いや、その──姫様!申し訳ない!怪我はないか!」


水無月に襟首を掴まれながら星月夜が叫んだ。


「えっ、はい!大丈夫です──」


「この──オッサン!」


げし、と音がしそうな蹴り方で星月夜を蹴ってから水無月が露李の横に舞い戻る。


さきほど感動的な別れをしたはずの秋雨たちが露李のところへ戻ってきて、また深く頭を下げた。


「すまない、露李姫。星月夜は脚力があるもので、急ぎの時にああいうことをする」


「いえ、私は大丈夫ですけど…」


ドン引き、といった顔の守護者と海松を見ながら苦笑い。

そして美喜の方を見る。


「美喜…大変だね」


「そうね。メンバーが濃いから、薄味なあたしは困ってるわよ」


「美喜も濃いと思うよ」


「失礼ね、あたしは常識人よ」


そんなことは言ってないんだけど、と思いながら美喜を抱き締めた。

腕の中で美喜は驚いたように身を固めていたが、そっと露李の背中に腕を回した。


「じゃあね、美喜」


「あら、寂しいこと言うわね。またすぐに会えるわよ、あたし特別任務もあるし」


「え?」


すぐに、を強調した言い方に露李が首を傾げている間に、美喜はひらりと手を振って離れてしまった。


「じゃあ、朱音。元気で」


「時雨…貴方もですわ」


朱音と秋雨も別れの言葉を言い、門に歩いていく。


「それじゃあな、姫様。重ね重ねありがとうよ」


星月夜が笑ってそのあとに続いた。

一行が見えなくなるまで露李は見ていた。