「よし、行くか」
「行きましょう」
妙に気合いが入っているな、と露李は隣で気を引き締めるふたりを眺めながら不思議さを募らせた。
「ねえ、そんなに気合い入れてるけど…起こしに行くだけよ?」
「何を言ってるんだ。お前も気を引き締めとかないと命を落とすぞ」
「そんなになの……?」
理津を起こすのに戦争でも起こす気か、と露李は不安に思いながら結が襖に恐る恐る手をかけるのを見つめた。
「いいかー露李。理津を起こすときは、もう外からの声かけなんざ要らねーからな。そうっと入るんだぞ」
「は、はい」
「そうだ。お前なら大丈夫とは思うが、何か飛んできたら必ず避けろ」
「うん、分かった」
理津の部屋に何があるのか、とますます不安が募る。
変態発言を除けば至って理性的な──恐らくだが──である理津が何をするというのだろう。
何か危険なペットでも飼っているのか、と考えを巡らせていると、さっと襖が開かれた。
次の瞬間、中から紫の炎が飛んでくる。
驚いて動きが遅くなった露李を結が抱えて避けた。
「だから言っただろー!」
「でも、何で──」
疾風の呆れ顔が見えた。
「あいつは低血圧で、途方もなく寝起きが悪いんだ……」
「それを先に言って欲しかった!」
心から思いながら、三人で部屋に入る。
結が様子を見ながら指示を飛ばした。
「…俺が布団を剥ぐから、お前はコイツを羽交い締めにしてくれ。露李、覚醒するまで声をかけろ」
また二、三個、炎が浮かんだ。


