「こーら疾風!結先輩を無視するするたぁ何事だー!」
バサバサと布団の塊を剥がしていくと、中から寝間着姿の疾風が現れた。
綺麗な青みがかった透明の髪はあっちこっちに跳ね、寝間着の帯が緩んで逞しい胸筋が丸見えだ。
こんなにゆるゆるの疾風は見たことがない。
「なに…するんだ」
ぼうっとこちらを見上げる疾風の目に露李が映る。
藍色の目がこんなにもボンヤリしていることはないので貴重だ。
「おはよう、疾風」
「おはよう……ん?」
ようやく状況を飲み込めてきたのか、のっそりと起きて疾風は二人を見上げた。
「こんなところで、何をしているんだ?」
「何をしているんだ、じゃねーよ。お前がなかなか起きねーから起こしに来てやったんだろうが」
「それは…どうも」
「んで、理津起こしに行くぞ」
「そういうことか…ああ、寒い。眠い。露李、ちょっとこっち来てくれ」
くぐもった声で言うので、いそいそと歩み寄る。
疾風の前に座ると、露李の身体にゆっくりと腕が回って抱き締められた。
「おい疾風なにしてんだ!」
「ちょ、疾風!苦しい!」
ジタバタ動いてやっとのことで向きを変え、座ったまま後ろから抱かれる形で落ち着く。
「あー……暖かいな」
「もう、急にそれやめてっていつも言ってるでしょ!」
「だって寒いんだよ」
実のところ、疾風が露李に寒いと言ってくっついてくるのは珍しいことではない。
慣れたので何も思わなかったが、即座に結が露李を疾風から剥がした。
「何するんすか」
「何じゃねーよ、露李もおとなしくなってんじゃねーよバカ!」
「バカ!?」
「こ…言葉のあやだ、気にするなって!ほらっ、疾風待ってるから着替えて顔洗ってこい!」
慌てて誤魔化した結を睨んでいる露李を見た疾風が笑いながら部屋から出ていく。
さっぱりした顔つきで戻ってきて、着替えるというので露李たちが入れ替わりで部屋を出た。


