【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく


 俺も行くからちょっと待ってろ、と出てすぐに声が聞こえたので、おとなしく襖の外で待つ。

間もなく、気に入りのパーカーを着た結が出てきた。

欠伸をしながら顔を洗いに行き、また戻ってきた彼はいつものように明るい笑顔を浮かべている。


「じゃあ、行くか!戦争に」


「戦争?」


聞き間違いかと思ったが、そうではなかったらしい。

結がまた苦笑いする。


「おう。何だ、文月が言わなかったか?」


「何も言われませんでしたけど…」


「さてはあいつ逃げたなー。っと、まず疾風から行くのが良いだろうな」


何か含みのある言い方に露李が首を傾げると、結が面白そうに声を出して笑った。

いつもながら笑顔が素敵だ、と露李もつられて笑う。


「結先輩と一緒なら大丈夫だと思ったんですけど」


「んー?それはどうだろうな…数が多いことに越したことはねーから疾風を先に起こすのが賢い、たぶん」


「本当に戦争に行くみたいですね」


「お前もすぐ分かるぞー。あれは戦争だ」


またしてもハテナが飛び交う。

しかし何かを問う前に廊下の突き当たりの疾風の部屋の前に立った。

結が大きく息を吸って声を張り上げた。


「疾風ー!朝だ、起きろー!」


何やら呻き声が聞こえてくる。

寒さを極端に嫌う疾風は布団から離れ難いだろう。


「寝てんのかー?起きちゃったぞー皆」


言い方が可愛いので露李が吹き出すと、結が怪訝な顔で振り返った。


「何だよ」


「何でもないです」


変なヤツだな、と言わんばかりの視線をよこして、結はまた仁王立ちになった。


「入るぞー?」


返事はない。

結が躊躇なく襖に手をかけた。

失礼します、と言ってから結について中に入ったが、疾風の姿は見当たらなかった。


「あれ。疾風は?」


思わず呟くと、結が部屋の一角を指差した。

その先に何か丸いモフモフした塊があった。


「───あれだよ」


呆れたような、面白がっているような声色だ。


「えっ、あれですか?」


とても人がその中にいるとは思えないが、寒がりの疾風のことだ。

露李が驚いているのを尻目に、結はスタスタと塊に近づいていく。