笑い合いながら着替えて身支度を整え、海松は台所に、美喜は露李と共に他の者を起こしにかかることにした。
秋雨たちと朱音は前に住んでいた離れで眠っている。
美喜にそちらを託し、露李は水無月と守護者のところへ向かった。
手始めに水無月。
「兄様。氷紀ー。起きて、朝だよ」
襖の外から声をかけてみたが、返事はない。
露李の前ではいつもきちんとしている水無月の寝ている姿は、あまりみたことがない。
わくわくしながら襖を開け、部屋を見渡した。
すぐ横に物騒な武器を置いて、水無月が眠っていた。
枕元に座り、まじまじと眺める。
露李と同じ栗色の髪が少し伸びて、最近は髪紐で一つに結んでいる。
その恐ろしい美貌はさながら王子様のようだ。
しかし、柔和な文月とは違って水無月は冷徹そうに見られることが多い。
実際そういう傾向もあるが露李には大好きな兄である。
見てばかりでは悪いと思い、再び声をかける。
「兄様、朝だよ。おはよー」
ぱちり、と音がしそうな開き方で目が開いた。
「おはよう、露李」
爽やかに起きて挨拶をしてくる。
また驚いてしまった。
「おはよう、氷紀」
「うん。ところでどうしてここにいるのかな?」
「いつも起こしてもらってばっかりだし、早く目が覚めたから。よく眠れた?」
「うん。すごく」
すごく、と良い笑顔で言ったかと思うと、露李を引き寄せてぎゅうぎゅうと抱き締める。
「わ、何?」
「良い夢だったよー、こんな感じで。幸せだった。ああ、露李は可愛いなあ」
「何言ってるの、寝惚けてるの?ほら、起きるよ」
「あと五分」
「ダメ。皆を起こしに行かなくちゃいけないから離してっ」
勢いよく身を捩ると、いとも簡単に腕が外れた。
不服そうな水無月に笑いかける。
「早く着替えて出てきてね」
「あいつらの寝起きなんて危険だ」
「氷紀も同じくらいでしょ」
冗談のつもりが思いの外ショックだったらしく、水無月はえっ、と声を上げた。
その隙に襖まで行き、ひらひらと手を振って部屋を出た。


