秋雨たちの元へ戻ろうとすると、今度は宵菊に呼び止められた。
「姫様。私たちから差し上げたいものが」
「え?何々、何ですか?」
宵菊の嬉しそうな顔につられて、露李も笑顔になる。
妖艶な雰囲気を醸し出す宵菊だが、今は子供のように無邪気に笑っていた。
隣にいる睡蓮も得意気に頬杖をついてこちらを見ている。
「色々とばたばたしていて遅くなってしまいました。これを」
宵菊から差し出されたのは首飾りだった。
首に負担がないように金色の細かいチェーンが繋がっていて、真ん中に五枚の花びらを持つ金色の花がついていた。
あまり洋風のものを持つことのない露李は目を輝かせる。
「わあっ、ネックレスですか?」
「そうです。この五枚に私たちの真名を使って術をかけました。姫様を少しでもお守りできるように」
「皆さんの真名…」
「はい。私の真名は、菊華(きっか)と申します。さらわれてオークションで売り捌かれていたところを、有明さまに助けて頂いたのです」
「俺の名は蓮(れん)。親無しで殺し屋ばっかりしてたとこを助けられた」
「で、明日の朝迎えに来ると思いますが、星月夜です。奴はああ見えて星夜(せいや)というんです。そしてあと一人は、美喜です。黎明」
「そんな…真名なんて教えてもらっちゃって良いんですか?」
恐る恐る露李がネックレスを受け取ると、宵菊はまた嬉しそうに微笑んだ。
「勿論ですわ。主は有明さまでも、今の生きている私達の忠誠を貴女様に誓ったのです」
忠誠、という言葉に居心地の悪さを覚えたが、露李はしっかりと受け取って首につけた。
「ありがとうございます」
「いえ。…最後の花びらは、秋雨です。真名はその…」
「今から聞いてきますね」
露李はぺこりとお辞儀をしてから、秋雨の方へ駆けた。


