「本当に、本当にごめんなさい──」
次から次へと零れてくる涙を止めようとはせずに、朱音は謝罪の言葉を口にした。
「私が神になどなるべきではなかったのに。ああ、どうして……私はあまりにも未熟でした。自分のことばかり考えて、貴女という命を生み出して、苦しませて、全て私のせいなのです」
「やめてください。私を生み出したことまでを後悔してるみたいに、言わないでください」
光の中で露李が笑う。
悲しそうな笑顔だった。
朱音はその顔に息を飲み、自らの軽率さを呪った。
自分のせいで、目の前にいるこの少女がどんな人生を送ってきたのか、想像だにしなかった。
やはりまだ許されたいと願っている自分の甘さが嫌になる。
「でも、氷紀兄様と対にして下さったおかげで随分と救われました。だって、それって血は繋がっていなくても家族みたいなものじゃないですか」
「露李姫……」
蚊の鳴くような朱音の声に、露李は少し首を傾げてみせた。
「そんな仰々しい呼び方じゃなくても良いですよ。私に代わってもう一つの世界を見て下さるんですから」
「そんな、私は」
「じゃあ、これもお願いの一つに」
悪戯っ子のような目をして言う露李の顔を見て、朱音は思わず吹き出す。
──あまりにも、花姫と似ていて。
「承知致しましたわ」
「やった!んー、じゃあ『露李ちゃん』で」
「……露李、ちゃん」
恥ずかしそうな朱音に露李も吹き出す。
ただ嬉しかった。
「おこがましいかもしれないですけど。これからいっぱい仲良くなりましょう。朱音さまのことも沢山聞きたいです」
「…ありがとうございます。あの、露李姫─露李ちゃん」
「何ですか?」
何かを決意したように拳をつくる。
「私に、名前を下さい。新しい世界で、二度と同じ過ちを犯さないで新しく生きるために。名前を頂きたいのです」
強い目だ、と思った。
しかし露李にそれは納得できなかった。
「じゃあ、『アカネ』にしましょう。茜色の、アカネです」
不思議そうに朱音が眉をひそめる。
「だって、それは朱音様がお父様とお母様から頂いたお名前でしょう?気持ちは分かります。でも響きを変えるつもりはありません」
ごめんなさい、と朱音がまた呟くのが分かった。
嫌味のようになってしまったかもしれないと少し後悔する。
「…貴女の、お名前は。夏焼家の方々がおつけになったんですの」
言葉が出なかった。
無言のまま、朱音を見つめる。
──ねえ、私は。
少しでも、夏焼の人に愛されていたのかな。
そう願っても良いのだろうか。
本当に自分が生まれたことを喜んだ人がいたのだろうか。
嬉しくて、それと同時に悲しかった。
──私は、そんな人たちを消した。
恨んでいるだろうか。
本来、お母様と呼ぶはずの人は。
お父様と呼びたかった人は。
「…大切にします」
それだけしか言えなかった。


