「神になれば、誰かを想ったりする感情が希薄になってしまいますの。…私にとって、その世界に生きる者たちは駒でしかありませんでしたわ」
「駒…」
「ごめんなさい。…貴女には、誰かを想う心を失って欲しくないのです。ですから、その髪飾りを差し上げます。神として最後の力を込めました。…微力でも、どうか身に付けて下さい」
「ありがとう、ございます」
声が震えそうになるのを懸命に堪える。
誰かを想う心。
絶対に失いたくない、と思った。
「身勝手にも、貴女に私が授けた吸収の力……強大なものですわ。どうか、貴女で居てください。露李姫…昔も、今も。貴女は私の光なのです」
朱音が笑う。
今まで見てきた中で、一番美しい笑顔だと思った。
花が咲くような、少女のような笑顔だった。
「必ず……証明してみせます。私は心をなくしたりはしません」
凛とした声が部屋の中に響いた。
守護者たちがふっと笑う気配がした。
「…俺たちの姫様はつえーなぁ」
結のその言葉が露李の心に暖かい火を灯す。
「当たり前だろう。俺の露李だ」
水無月の声。
皆が集い、笑顔が花開く。
露李の大切なものだ。
それを見て、決意を固めたように露李が笑顔で朱音を振り返った。
「ねえ、朱音様。少し外に出ませんか」


