【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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「上がりだ」


ババ抜きに熱中していた朱雀は、最後のカードを場に投げ捨てた。


「僕も上がりです」


知恩もふっと息をつく。


「もう一回だ、もう一回やれくそてめぇ」


水鳥が盛大に舌打ちをしてジョーカーを放った。


「おい露李ー、もう一回やんぞ」


「もう一回戦やると言った覚えはない」


「僕もです。ここは露李先輩に決めていただきましょうよ」


「そうだな。あいつは何やってんだ?」


朱雀が縁側に目をやる。


「お腹一杯で疲れたから、と夕涼みに」


そう知恩が答えたときだった。

ものすごい突風が朱雀たちを襲った。

ついでに縁側につながる襖が倒される。


「あれ、結先輩じゃないすか。どうし─」


朱雀がそう言ってから、風雅の表情を見て言葉を切った。

「この家の結界が一時的に切れた」


「笑えねぇな」


水鳥が表情を険しくする。


「露李はどこだ?今あいつを一人にするとまずい」


「…え、縁側にいたはずですが」


「俺たちが来たときには露李ちゃん居なかったけど」


風雅の後ろから大地が静かに告げた。


「露李!どこにいる!?」


風雅が叫ぶが、応答はない。


「くそっ、何で目を離した!」


「今はそんなこといってる場合じゃないよ、結。露李ちゃんを探すことが先決だ」


大地の言葉に頷き、風雅は知恩の方を向いた。


「静。やれるか」


「勿論です」


知恩が空に手をかざした。

萌黄色の光の球が暗闇を照らす。


「【ここに残る記憶たちよ、今姿を現せ】」


ふわりと映像が浮かび上がった。

透き通った露李の幻影。

縁側に座り、何かに思いを馳せている。

未琴が現れた。


「こりゃ…」


風雅が、口を開いた。

一部始終を見た他の四人は言葉を発することができないでいる。

露李はしばらく人形のように固まっていたが、唐突にも顔をくしゃりと歪め、走って行った。


「…結界を破ったのは、露李だったのか」


朱雀が呟いた。