「私を守ろうとしてくれて、ありがとう」
「私は、露李姫を…」
「良いんです。…でも、傷はちょっと痛いです」
おどけて言ったつもりが、朱音の表情を曇らせてしまう。
「露李姫…申し訳ありません」
「え、何ですか?」
「傷が、治りにくかったり。力が弱まってはいませんか…?」
え、と身体が固まる。
代わりに水無月がつかつかと歩いてきた。
「どういうことだ、貴様。まだ何かしたのか」
「…露李姫が神になるのを中断したことで、彼女の魂が分断されていると思われますの。このままでは、露李姫は弱ってしまう…」
「魂が……?」
何がなんだか分からずに露李の返事がおうむ返しになってしまう。
「はい。……私のせいですの。露李姫」
「そんなことはどうでもいい、大体は貴様のせいだろう。…どうしたらいい」
「私にはもう…」
「ふざけるな!!」
「……水無月。露李姫を」
秋雨が露李の横に膝をついた。
その顔を見上げる。
「露李姫の、半分の魂を神化させよう」
「時雨っ……!それでは──」
「秋雨君、何か問題があるの?」
水無月が朱音の言葉を遮り、秋雨に凄む。
「…神は、時に平等に残酷に判断しなければならない。神としての露李姫の人格と、今の露李姫の人格に分かれてしまう」
その場にいる者が息を飲む。
それは、露李の最も恐れていること。
自分ではない自分が存在することだった。
「おい、露李…」
黙りこくった露李に結が呼びかける。
露李が顔を上げる。
その瞳には、大きな覚悟の光が宿っていた。


