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「それからですわ。扇莉と時雨は姿を消し、そして私は、私は──封印のために、花と守護家の中で最も力の強い月草が花霞に命を捧げたと聞きました」
朱音の震える声に、露李は悲しく俯いた。
「…月草を除く守護者たちは、悲しい歴史を残すために起こったことを書物に記しました。そして彼女の後を追って死んだのです。…花姫が亡くなったとなれば守護者たちの命も残り少ないものではありましたが」
「それで、朱音様は神に…?」
その質問に、朱音は自分を嘲笑った。
「私は逃げたのです。恐ろしくて、ただ恐ろしくて……神になどなるものかと思い、愚かにも逃げました。しかし、逃げられませんでした。花姫が亡くなったこと、そして扇莉が復讐に燃えたこと、時雨が彼女に服従したことから…神の座は当然のように私になりましたわ」
「…その儀式を行ったのは、誰なんですか?」
「分からない…しかし、四人いましたの。私達とよく似た姿をしていましたわ。そうして、私は神になってすぐに分かったのです。心を忘れられてしまうということの、本当の意味を」
「本当の、意味?」
「花がどんな人なのか、思い出せていたなら。扇莉も時雨も黒いものに染まることはなかった。私は……また、怖かった。自分も恨まれるのではないかと。そして…露李姫、貴女を創ったのです」
朱音の泣き腫らした顔が、蝋燭の光に照らされた。
「世界に干渉し、鬼の存在を曖昧にしました。この神影も今では廃れ、私はもう力がない。鬼を戒める存在である風花姫も、他に知る人がなければ力を失う以外に私は罰せられることだけはありません。それを利用したのです」
透明な滴が蔵の床を濡らした。
露李が檻の隙間からハンカチを差し出す。
朱音は信じられない、という顔をしてそれを受け取った。
そして笑う。笑いながら、泣いていた。
「神を、早く辞めたかった。輪廻の中から魂を取り出し、花姫の魂で貴女を創りました。絶対的に、誰よりも強くなるように私の全てを注ぎましたわ。女の子でないといけなかった。本当は秋篠家に生まれるはずの魂を、無理矢理夏焼家に戻して」
「どうして、女の子なんです?」
「……花姫に、会いたかったのです。一度亡くなれば同じ者は生まれない、そう知っていましたけれど…期待したのです。そしてまた、恐ろしくなった」
私は愚か者です、と朱音は肩を震わせて泣いた。
「今度はっ…いずれ忘れられる運命に貴女を置いたことを、後悔したのです」
「…だから、あんな風に矛盾したことばかり仰ったんですね」
「ごめんなさい……私、私は……貴女にもう悲しんで欲しくはなかったのに!!なのにっ…貴女は、とても強い」
露李は思わず笑みを浮かべた。
朱音の手をそっと自分の手で包む。
「それからですわ。扇莉と時雨は姿を消し、そして私は、私は──封印のために、花と守護家の中で最も力の強い月草が花霞に命を捧げたと聞きました」
朱音の震える声に、露李は悲しく俯いた。
「…月草を除く守護者たちは、悲しい歴史を残すために起こったことを書物に記しました。そして彼女の後を追って死んだのです。…花姫が亡くなったとなれば守護者たちの命も残り少ないものではありましたが」
「それで、朱音様は神に…?」
その質問に、朱音は自分を嘲笑った。
「私は逃げたのです。恐ろしくて、ただ恐ろしくて……神になどなるものかと思い、愚かにも逃げました。しかし、逃げられませんでした。花姫が亡くなったこと、そして扇莉が復讐に燃えたこと、時雨が彼女に服従したことから…神の座は当然のように私になりましたわ」
「…その儀式を行ったのは、誰なんですか?」
「分からない…しかし、四人いましたの。私達とよく似た姿をしていましたわ。そうして、私は神になってすぐに分かったのです。心を忘れられてしまうということの、本当の意味を」
「本当の、意味?」
「花がどんな人なのか、思い出せていたなら。扇莉も時雨も黒いものに染まることはなかった。私は……また、怖かった。自分も恨まれるのではないかと。そして…露李姫、貴女を創ったのです」
朱音の泣き腫らした顔が、蝋燭の光に照らされた。
「世界に干渉し、鬼の存在を曖昧にしました。この神影も今では廃れ、私はもう力がない。鬼を戒める存在である風花姫も、他に知る人がなければ力を失う以外に私は罰せられることだけはありません。それを利用したのです」
透明な滴が蔵の床を濡らした。
露李が檻の隙間からハンカチを差し出す。
朱音は信じられない、という顔をしてそれを受け取った。
そして笑う。笑いながら、泣いていた。
「神を、早く辞めたかった。輪廻の中から魂を取り出し、花姫の魂で貴女を創りました。絶対的に、誰よりも強くなるように私の全てを注ぎましたわ。女の子でないといけなかった。本当は秋篠家に生まれるはずの魂を、無理矢理夏焼家に戻して」
「どうして、女の子なんです?」
「……花姫に、会いたかったのです。一度亡くなれば同じ者は生まれない、そう知っていましたけれど…期待したのです。そしてまた、恐ろしくなった」
私は愚か者です、と朱音は肩を震わせて泣いた。
「今度はっ…いずれ忘れられる運命に貴女を置いたことを、後悔したのです」
「…だから、あんな風に矛盾したことばかり仰ったんですね」
「ごめんなさい……私、私は……貴女にもう悲しんで欲しくはなかったのに!!なのにっ…貴女は、とても強い」
露李は思わず笑みを浮かべた。
朱音の手をそっと自分の手で包む。


