じゃり、と足音が聞こえた。
「おお、お揃いか。何だ、何の話をしていたんだ?」
いつものように尊大な態度で、しかしどこかに切なさを滲ませた扇莉。
「扇莉──」
朱音の顔をみた扇莉はからからと笑った。
「何だ、お喋りな奴だなぁ時雨は」
「俺は何も…」
「朱音が聡いだけなのか?まあ…そうだな。風花になるのが誰かで、本当の悲劇が決まるのだろうな」
「…本当の、悲劇ですの?」
「ああ。実はな、朱音と出会った頃にはもう花と霧氷は出会って愛し合っていたんだ。婚約解消も、内密ではあるがそのときから私と霧氷の間で決まっていたことだ」
「それが悲劇ですの…?」
「考えてみろ、私や時雨や朱音が風花になれば二人は悲劇だぞ。霧氷は好きでもない女を守るために命を賭ける。私はそんな二人を見て喜べるほど歪んではいないよ」
ああ、どうして。
そう思ったときだった。
ひれ伏したくなるような気が三人を襲った。
「なっ……何ですのこれ!?」
「まさか───」
時雨が呟いた途端。
銀色の気がほとばしる。
「花───」
「扇莉、時雨、朱音…」
光の中から恐ろしいほどに美しい女が現れた。
花であることは間違いないが、今までとは比べ物にならない気を纏っている。
「私、風花に選ばれたの。“神”になるの──」
「花、もう行ってしまうのか?」
「ええ。…もう行くわ。忘れられてしまう前に、皆に会いたかったの」
美しい笑顔だけが残って、世界が銀色に包まれる。
彼女が、人々の中から消えていく───。


