【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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「…婚約、解消?扇莉と霧氷様が?」


十四才の春、神影の屋敷の縁側で、時雨の言葉に大きく目を見開いた。

四年の月日で随分と力の強くなった朱音は、三人と対等に話せるまでに成長していた。

時雨たちは見た目は十八ほどなので、そこまで見劣りはしなくなった。


「ど、どうしてですの?」


「どうして?」


時雨ははは、と笑った。

どこか乾いていて、何か含みのある笑いだった。

朱音はむっと唇を尖らせて時雨を睨んだ。


「…む、何だ」


「時雨も扇莉も、花も。私に何も話しませんのね」


湯呑みに入った緑色のお茶を眺めながら言ってみると、自分の声が妙に刺々しくて嫌になる。


「そんなことはない」


「そんなことありますわ」


「…困ったな。これは俺の秘密を教えたら良いのか?」


「そういうことでもありませんけれど。教えて下さるの?」


「仕方ないな」


時雨が今度は面白そうに笑う。

朱音はその笑みに心が温まるのを感じた。


「…俺は、扇莉を愛している」


「知っていましたわ。今さら何を」


「な、知って……!?」


「バレバレですのよ」


全く溜め息が出そうだ。

しかし、時雨の切ない顔がそうさせない。


朱音は時雨の髪に触れ、目を合わせた。


「…それで?解消して、どうなさるんですの?」


時雨と婚約するなら、こんな顔はしない。

それに──


「花と、霧氷は愛し合っているんだ。あの二人が今度、婚約する」


「…そう」


扇莉は、きっと霧氷のことを愛していた。

朱音の顔が自然と俯く。