「……いやですわ、朱音そんなもの」
三人が困ったように笑った。
その表情にはっとして頬を染める。
「も、申し訳ありません。私…」
忘れられたくなど、ない。
その想いだけは本物だった。
「…分かるわ」
花の優しい声に顔を上げる。
曖昧な笑みを浮かべた扇莉が俯いていた。
時雨は真剣な表情で朱音を見つめている。
「私だって、一人は嫌だわ。…でも、愛する人が一緒なら素敵だとは思わない?」
「愛する人…?」
花はまだ婚約していなかったはずだ。
「…そうだな。愛する人が、隣にいれば」
扇莉が呟く。
初対面なはずなのに、あまり彼女らしい言葉とは思えなかった。
そして、それよりも時雨の表情が気になった。
苦悩に満ちた、何かに耐えるような表情を浮かべていた。
切なさと寂しさが朱音の目に映った。
さあ、と花が手を叩く。
湿った雰囲気を払拭するように、美しい笑顔が朱音に向けられた。
「こんなお話、もう終わりにしましょう?今日は朱音さんのお誕生日だわ。大体のことは伝えたんだし、私たちからの贈り物を受け取って欲しいわ」
「おお、そうだ。朱音姫よ、しかと心に焼き付けておくんだぞ?」
「偉そうな奴だな…朱音姫に喜んでもらえると嬉しいのだが」
三人が優しく微笑み、朱音もぎこちなく笑った。
ずっとこんな風に優しく温かい時が続くことを、誰もが願っていた。
「じゃあ私から行くわね」
花が宙に手を翳す。
銀の光の粒が舞い、白いくちなしの花弁とともに花の姿が変化した。
銀の髪に、濃い金色の瞳。
額に一対の角が生え、辺りの空気が世にも美しく清らかな気で満ちた。
金色の光がくるくると舞い、八重桜を象る。
「まあ、何て…」
「次は私だ」
梅の花が舞う。
髪が銀色に染まり、目は煌めく青に。
同じように角が生え、花が創った八重桜の上に花弁を重ねていく。
「朱音姫、私からも」
時雨が囁くとともに椿の花弁に包まれ、彼の髪が銀色になる。
優しい瞳は柘榴色に染まった。
その瞳の色と同じ光が前の二人が創った八重桜を取り巻いた。
「できた。…さあ、これを君に」
光の中に時雨が手を入れ、中から取り出した何かを朱音の髪につけた。
「まあ、髪飾りですの?」
「ええ!とても練習したのよ、気に入ってくれると嬉しいのだけれど」
「本当に…本当に素晴らしいですわ!こんな嬉しい贈り物、頂いたことありませんの!本当に、本当にありがとうございます」
「はは、これは甲斐があったな。実はな、これを提案したのは時雨なのだ」
「おい、扇莉…それは」
「時雨様が!?」
「殿方にしては繊細よねぇ」
「花まで…お前たちは本当に」
真っ赤な時雨の顔、花と扇莉の笑顔。
幸せな時間だった。


