「その…使命というのは」
「『風花姫』になることだ」
扇莉の言葉に首を傾げる。
姫、ということは時雨はその役職に就けないのではないのだろうか。
その思いが伝わったのか、花がくすくすと笑った。
「もう、扇莉。貴女はいつも言葉足らずなんだから」
美しい栗色の髪を揺らして、朱音に微笑みかける。
「私達は、『風花』になるの」
「風花…雪?」
「そう!私達の変化したときの髪色になぞらえた表現なの。私たちは空から舞い散り、そして時にはずっしりと降り積もって世界を眺める──そんな存在になるの」
自然な花の口調に背筋が冷えるのを感じた。
何故だかは分からないが、何かとても恐ろしい。
「それ、は…死ぬということとは違うのですか?」
「死ぬ?いいえ、真逆よ。永久に生きるの。この世界にある程度以上は干渉せず、皆を見守り続ける」
「でも…そんなの朱音、怖いですわ」
「そうかもしれないな。だが、いずれ分かる。残酷で世にも恐ろしいものだが…美しい。そしてな、風花は欠けがえのないものを得るんだ」
「やめろ、扇莉」
時雨が扇莉をちくりと睨んだ。
「どうしてだ、いつか分かることだろう?──守護者だよ。唯一自分の心を守ってくれ、覚えてくれる存在」
「守護者様ですの?朱雀様や、風雅様のような?」
花と扇莉が頷く。
時雨は溜め息をついて横を向いた。
「ああ。『風花』になるとな、朱音姫。その者は忘れられてしまうんだ。存在や姿かたちは皆覚えているがしかし、その者の心は守護者以外から忘れられてしまう」
朱音は目を見開いて絶句した。
そんな秘密が隠されていたなんて。
言葉が声にならなかった。


