「何か、父様が朱音に秘密にしていることがあるんですの?」
朱音の問いに花と時雨が黙りこむ。
扇莉だけが涼しい顔で笑った。
「私達には使命があるんだ。それもな、当主だけのだぞ。朱音姫もその候補だ」
「…?皆さんと私で担うのではないのですか?」
朱音の疑問は全うなものだったが、扇莉は驚いたように口を閉ざした。
その反応にまた自分の心に不安が募るのが分かった。
「ごめんなさい、そんな不安な気持ちにさせてしまって。その使命はね。私たちのうちの誰かがいずれ一人で担うの」
「一人で……」
花の言葉にまたしても表情を曇らせ、朱音は黙っている時雨を見上げた。
「朱音姫、恐れることはない。私達の誰かがいずれ選ばれるのだ。請け負うのは一人でも、支える者が誰もいないというわけではない。分かるか?」
「そうよ、朱音さん。…ところで、内容は私たちが話すべきかしら?」
花が穏やかな笑みを浮かべながら扇莉を振り向いた。
「そうだな。同じ使命を担う可能性のある者として」
ひどく美しい彼等の言葉がどこか寂しさを帯びていて、朱音はまた不安を募らせるのだった。


