花と扇莉が言い合っているのを見ていると、すっと時雨が朱音の目の高さにしゃがんでくれた。
「初めまして、朱音姫。冬高 時雨だ。気兼ねせずに話しかけてくれ」
冷たそうに見えるが、時雨の物腰は柔らかだ。
朱音はほっと安心して、初めて自然な笑顔を浮かべた。
「よろしくお願い致します。…その、皆様随分仲がよろしいのですわね」
「そうだな。私達は家の関係上よく話す。朱音姫も大きくなった故忙しくなるだろうが、共に頑張って行こう」
ふわりと笑う時雨の顔に少しの間見惚れ、慌てて扇を取り出して顔を隠す。
いつの間にか口論を終わり、その様子を見ていた花と扇莉がころころと笑い声をあげた。
「…?何でしょう?」
「これこれ時雨。まだ朱音姫は初なのだ、お前の端正な顔は刺激が強いのではないか?」
「うふふ、扇莉ったら。時雨には本当に甘いんだから」
「こら、二人とも。朱音姫が困るだろう。子供をからかうんじゃない」
「まあ失礼ね。私達もそう変わらないでしょう?」
花が悪戯っぽい笑顔を朱音に向ける。
「朱音さん、私たち四家の別の家業のことはお聞きになって?」
「別の家業…ですの?いいえ、まだですわ」
「おや、それは本当か。現当主も娘が大切とみえる」
「当たり前だろう。扇莉も花も箱入りのくせに」
呆れた口調で何やら言っている時雨の言葉も、全く理解できない。
朱音はまた怪訝な顔で首を傾げた。


