話しているのは露李の母親であって、どこかの無関係な巫女ではない。
「何を、仰っているのですか……」
声が震える。
「ですから、貴女に母親の記憶を与えても全く働いてくれないと言っているのです」
分からない。
そんなはずがない。お母様はお母様でしょう?
そう聞いてしまえたら良いのに。
聞くのが怖い。
「貴女の母親との記憶は全て私の術が造り出したもの、と言えば理解できますか?」
音が、消えた。
遅生まれの鈴虫の声も、落ち葉が地面に落ちる音も。
時間が止まるような気がした。
時間が止まってしまえば良いと思った。


