【流れ修正しつつ更新】流れる華は雪のごとく

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 蝶よ花よ。

そんな風に育てられてきたと朱音は自負していた。

母が思った通りの娘に育ったと思う。


秋篠家の長女として生まれ、何不自由のない暮らしをしていた。

鬼の一族は皆揃って強く、美しかった。

中でも群を抜いていたのはやはり、鬼の四家の血筋だった。


春月、夏焼、秋篠、冬高。


そしてまた、この四家の中でもずば抜けて美しく強かった者たちが朱音より百年早く生まれた三人だ。


春月 扇莉、夏焼 花、のちに秋雨と名乗る冬高 時雨。


扇莉と時雨はいずれ結婚するものだろうと言われていた。

だが、扇莉の婚約者は守護者の五家の一人、霧氷だった。

鬼を率いる家系の扇莉と時雨は立場上よく会うことがあり、尊大な扇莉の我が儘を時雨がきくというような形で仲が良かった。


秋篠家としての力が芽生えるのにそう時間はかからず、朱音は風流な事柄から戦闘までそつなくこなせるようになった。

秋篠家以外の三人に早く追い付きたくて、努力をした。


話に聞いていた百年先輩の当主候補たちと初めて意識して出会ったのは、朱音が十歳の頃だ。

十歳の誕生日、秋篠家で催された誕生日会で三人と出会った。

一族での宴会に疲れ、別室で休んでいるときだった。


「朱音様。失礼致します」


側近の女房が不意に朱音がいる部屋に入ってきた。

わざわざ騒がしい中から逃げてきたというのに、何があるのかと振り向く。

不機嫌な朱音の表情に困った顔をして、女房は後ろを振り返った。


「なあに。誰かお客様でもいらっしゃいましたの?」


「あの…春月、夏焼、冬高の当主様が」


「あの方々が!?私を訪ねてですの!?どうして早く言わないんですのー!」


名前を聞いた瞬間、ばたばたと慌ただしく立ち上がる。

憧れの人が自分の誕生日会を訪ねてくるなんて、思ってもいないことだった。