「私、そんなつもりは……」
青ざめたままの朱音は、ひらりと手を鉄格子に翳した。
目に見えて守護者たちが身構える。
鉄格子の氷が溶けた。
元に戻すためだけの動作だったらしい。
「…朱音、落ち着きなさい」
秋雨が安心させるように呼び掛ける。
狼狽えたままでは収拾がつかない。
「…申し訳ありません」
「朱音様…」
露李はただならぬ様子に驚きながら、ゆっくりと朱音に近づいた。
後ろから咎める声が聞こえたが、それどころではなかった。
「もしかして朱音様──力のコントロールが、出来なくなってるんですか……?」
神である彼女だが、露李と同じ鬼だ。
力の効果や有無は精神状態にも左右される。
ぴくりと肩を跳ねさせ、朱音は目を閉じて頷いた。
「だから、この牢を御自分で?」
「…そうですわ」
思い通りに動かせない、大きな力は危険だ。
そう考えてのことだった。
「露李姫に、お話ししなくてはならないことがありますの。お願いします、聞いてくださいませんか…?」
以前とは打って変わった態度に面食らう。
しかし露李はすぐに微笑んで続きを促した。


