「何か、こういうの久しぶりな感じがします」
露李が促すと、静は照れてそう言いつつ腰を下ろした。
「ほんとだね。学校では疾風と理津が私の護衛してくれてたし、最近は忙しかったし」
「はい。…でも、露李先輩のお声はよく聞こえてきますよ」
「え?声?そんなに大きいかな」
「あ、いえ。僕の力って少し不便で…発動させてるときによく心の声が聞こえてくるんです」
それは露李にとっても初耳だった。
「露李先輩はよく…本当に僕たちのことを想ってくれていますよね」
「え──」
「だから、先輩が新しい世界を作ろうとしたとき、聞こえてきたんです。僕たちが苦しまない世界を、と」
「静くんがそれを皆に伝えて、だから皆…怒ったの?」
「本当は神はこの世界に干渉できないはずなのに、この世界すら塗り替えようとしましたよね。僕たちのために。でも僕たちは──貴女に消えてほしくないんです」
ごめんなさい、と笑う静の顔がオレンジの光に縁取られている。
泣きそうな顔をして笑っていた。
「僕たちの中から貴女を無理矢理に消そうとするなんて、そんな悲しいことをして欲しくはないです」
悲しそうな笑みだった。
「僕たちは守るために、学校の皆から一時的に記憶を消します。これを正当化するわけじゃないです。でも、露李先輩は全部を消そうとしました。貴女のためじゃない、僕たちのために」
「それは…違うの。私が皆の重荷になってるのが耐えられないだけなの」
「重荷なんかじゃないです!本当に、僕たちは貴女に救われたんです」
「そう思ってくれて嬉しい」
露李は静の膝の上で握られた拳にそっと触れ、笑いかけた。
「お願いです。いなくならないで──」
「……うん」
オレンジの光が細くなる部屋の中、露李は小さく頷いた。


